韓国統一研究院(KINU)のオ・ギョンソプ氏(Oh Gyeong-seob)はロシアで働く北朝鮮労働者の実態を報告している。それを読むと、北朝鮮の労働者は奴隷のように酷使される一方、北労働者から入る外貨で金正恩総書記は核・ミサイル開発を進めているという。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は27日付電子版で、「私たちが別のところに気を取られている間、北は世界の大きな脅威となってきた」と警告を発する記事を掲載している。
当方は10年前、このコラム欄で「金正恩氏は“現代の奴隷市場”支配人」(2014年12月9日参考)を書いた。そこで「海外で働く北労働者総数は約6万人から6万5000人、約40カ国に派遣されている。労働者海外派遣ビジネスからの総収入は年間1億5000千万ドルから2億3000万ドルと見られている。労働職種は建設業、レストラン、鉱山、森林業、道路建設などが主だ」とその実情を紹介した。オ・ギョンソプ氏の報告はその10年後のロシアでの北労働者の実情だ。
以下、オ・ギョンソプ氏の報告の概要を紹介する。
ロシアに派遣された北朝鮮労働者の数を正確に掌握することは難しい。2019年の国連安全保障理事会決議(UNSCR)2397の採択後、ロシアは2019年末までに、ほとんどの北朝鮮労働者を帰国させたと安保理に報告し、約1000人しか残っていないと報告した。しかし、米国国務省の年次「2023TraffickinginPersonsReport」によると、2022年にロシア政府が北朝鮮の海外労働を禁止する安保理決議を回避するために4723のビザを発行または再発行したことが明らかになった。これらの労働者の大多数は極東地域の建設および伐採産業に従事しており、モスクワとサンクトペテルブルクで建設に従事している数千人がいる。北朝鮮とロシアの間の関係が強化される中で、ロシアに残る北朝鮮労働者の数が約3万人から5万人に急増すると予想されている。
KINUによってインタビューされた北朝鮮の亡命者によると、ロシアに派遣された北朝鮮人労働者は3万人以上いると証言している。ロシアが北朝鮮労働者を雇用することは、安保理が課した制裁に違反している。決議2397では、加盟国に対して、24カ月以内に収入を持つすべての北朝鮮労働者を帰国させ、27カ月以内に制裁委員会に報告することが義務付けられている。これらの規制にもかかわらず、ロシアと北朝鮮は制裁を回避または回避する方法を見つけており、北朝鮮労働者を帰国させる義務を避け、新たな雇用を継続している。その理由としては、深刻な労働力不足であり、ウクライナの戦争にも従事していることが挙げられるという。
ロシアのマラット・フスヌリン副首相は、2022年9月のロシアメディア(RBCTV)とのインタビューで、ロシア建設市場の労働力不足を緩和するために最大5万人の北朝鮮労働者を配置する計画を明らかにした。北朝鮮の高麗航空が2023年8月にロシアのウラジオストクに定期便を再開したことに続き、北朝鮮労働者の流入が増加している。北朝鮮制裁を回避するため、ロシアは頻繁に北朝鮮労働者に学生ビザを発行し、観光または技術ビザの名目のもとで滞在を許可している。
ロシアでの北朝鮮労働者の問題が2023年9月12日にロシアのヴォストーク宇宙基地で開催された金正恩総書記とプーチン大統領の首脳会談で議論されたと推測されている。国家情報院は、最近の北朝鮮のロシアへの労働者派遣の動きを注視していると述べた。クレムリンのドミトリー・ペスコフ広報官は、この北朝鮮・ロシア首脳会談の前後に、必要に応じてロシアが北朝鮮との国連制裁について議論する用意があると述べた。国連制裁にもかかわらず、北朝鮮労働者のロシアへの派遣が着実に増加し続けると予想される。
北朝鮮は海外労働者の派遣を通じて外貨収入を獲得する一方、ロシアはウクライナの戦争および地方都市の欠員による労働力不足を補うために北朝鮮労働者を受け入れる必要がある。
派遣された北朝鮮労働者は、公正な賃金、安全な労働条件、強制労働からの保護など、さまざまな人権侵害に直面している。まず第1に、2016年、ロシアの建設現場で働いていた北朝鮮の労働者は、年間7万ドルを国に支払わなければならず、年間2000ドルを超える収入を得るのが難しいと証言した。第2に、北朝鮮の労働者は安全な労働条件で働く権利を奪われている。彼らはロシアで伐採や建設などの過酷で危険な仕事を行っている。
2014年までマガダン州で働いていた亡命者は、1日に16時間の勤務が義務付けられていたと証言した。2023年5月、ウラジオストクの建設現場で働く北朝鮮の労働者は、夕食休憩を取らずに午後10時まで働いており、適切な安全装置なしに高所で危険な鉄工事に従事していたと報告された。第3に、北朝鮮の労働者は強制労働を拒否する権利を否定されている。一方、北朝鮮当局は監督者と警備員を派遣し、労働者を監視している。さらに、契約終了後に北朝鮮に戻りたいと願っている労働者でさえ、しばしば海外に留まるよう強制される。
外貨は主に核開発およびミサイル開発に使用されると考えられる。北朝鮮は外国で働く労働者を送り出し、2017年には中国(約5万人)およびロシア(約3万人)に送り出された約8万人の労働者に重い税金を課し、年間5億ドル以上(約671億ウォン)を得ていると推定されている。北朝鮮の労働者は、月給の70%を北朝鮮当局に、20%を地元の管理部門に送金し、約10%しか受け取れない。
安保理の北朝鮮制裁委員会は、仮想通貨の盗難や海外労働者の派遣によって得られた資金が核開発に転用されていると語っている。専門家パネルの報告によると、2022年の北朝鮮の仮想通貨の盗難額は170億ドルを超えた。北朝鮮が仮想通貨ハッキングと海外労働者の派遣によって得た外貨を核兵器および大量破壊兵器の開発に資金提供していることが明らかにされている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年2月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。