首相の英断?異例の政倫審出席:首相にそこまでさせた自民党は屁のような組織

岸田首相が自民党裏金問題にかかる政治倫理審査会に出席し、マスコミにオープンにすると述べたことで自民党内には衝撃が、そしてぐずぐずしていた審査会の開催が確定しました。

岸田批判が多い中で個人的には評価します。

岸田首相 首相官邸HPより

たぶん、岸田首相のこの判断に対して様々な声が出てくるでしょう。それこそ「自分の支持率が低いから捨て身の覚悟でこう言ったんだ」という見方も当然あるはずです。捨て身であることは間違いありません。現状、次の選挙、ないし自民党総裁選のどちらか先に来る時に自分の任期は終わりと囁かれるどころか既定路線という感じになっています。しかし、他に誰がいるのかと岸田氏に問えば国民人気とは別に現実問題として、今すぐ任せられる人が本当にいるのか、いや、俺がやらざるを得ないだろう、という気持ちを掻き立てているように見えます。

特に2024年度の予算成立を年度内に決めるためにはこの政倫審をこなさないことには話にならないし、裏金問題は対野党というより国民の最大の関心事であり、かじ取りを間違えれば自民党の崩壊にすらなりかねない事態なのであります。岸田首相は国会のスムーズな運営、そして日本が抱える様々な課題を国会を通じて解決していくという政治家本来のスタンスに基づき、自分がやらざるを得ないという隠し玉を投げたと考えています。

ところが政倫審をまとめる自民党の窓口がどうもはっきりせず、政倫審に出席をする予定の5人衆も公開なら嫌だ、そもそも非公開が原則じゃないか、という赤ん坊が駄々をこねるような保身の話をしたことで岸田氏が星一徹のように「そんなたるんだことを言っている場合じゃない!」と喝を入れたようなそんなシーンであります。

今回の騒動で本来であれば力を発揮しなくてはいけなかった自民党幹事長の茂木氏は個人的にはアウトだと思います。茂木氏はそもそも人徳がない人で自分の能力を過信して政治家同士の付き合いもあまりしないとされます。なので外務大臣の時のように一匹狼的なポジションだと力を発揮できるのですが、幹事長という内部組織の様々な力関係を調整し、ベクトルを一つにするという能力はご本人が一番わかっていると思いますが苦手なのです。なので今回のように駄々をこねる赤ん坊とモンスターペアレントのように噛みつく議員の収拾ができなかったことを露呈させました。

そういう意味では岸田首相の三段跳びのような今回の判断は文字通り驚愕とも言えるわけです。これを許したのは自己保身のことばかり考えるご都合主義の議員への厳しい叱責でもあると考えています。

岸田氏が今後、捨て身で秋の総裁選まで戦い、驚くべき行動をあと3つぐらいやれば岸田評は変わってくるでしょう。多くの政治評論家や国民の見方は変わるかもしれません。そして今の岸田氏はそれをやる可能性は大いにあると思います。具体的に何をやるかはわかりません。例えば春にアメリカを公式訪問した際にバイデン氏からウクライナの件、よろしくと囁かれて「はい分かりました」とは言わない勇気も一つ。判断がなかなか進まない新潟の柏崎原発の再稼働は気候変動で暑い夏が続く日本に於いて絶対必要だと地元を説得することも大事でしょう。能登半島地震を受け、自然災害脆弱地を全国で指定し、前倒しの予防的措置を行う準備もあります。景気は明らかに上向きで春の訪れは本質的には岸田首相にはフォローの風になるはずです。これをどう生かすかも首相の手腕の見せ所です。

政治は国内問題への対処で8割から9割は決まります。外交はほんのわずか。とすれば残り半年で首相の足跡をどれだけ残せるかが勝負になります。個人的には首相が財務省のポチと言われる点を見える形で修正することが必要かと思います。私はこの件については犬のクビにつけるリーシュをいつも思い出すのです。リーシュは犬が引っ張ると締まり、行動が正されると緩む仕組みですが、財務省が首相を引っ張ると閉まり、行動が正されると緩むそんな召使いでは話にならないのです。この首輪から外れるだけの力、つまり、最終的には麻生氏の全面バックアップがなくてもやれるだけの支持を得ることなのでしょう。

まずは開催される政倫審の内容の判断です。それが想定範囲内であれば本件は収拾に向かうでしょうし、もしもとんでもないことが起きれば岸田首相という金屏風が揺れることになるのですから身を捨てることにもなるでしょう。リスクテイクですが、首相にそこまでさせた自民党は屁のような組織だということです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月29日の記事より転載させていただきました。