野党は政治刷新戦線を組み自民党に圧力をかけよ

稀にみる政治改革の好機到来

自民党派閥の裏金事件を巡り、2日間わたる政治倫理審査会が行われ、日本が政治を刷新する好機がきたのに、虚しく時間を空費しています。新聞、テレビも説教調の報道を続けていれば、自民党が自ら改革に動きだすとでも思っているようです。

政治倫理審査会に出席した岸田首相 NHKより

岸田政権支持率も自民党支持率も20%台に低下し、「支持政党なし」は50%台まで上昇しています。こんな時でもないと、自民党は本当の危機感を覚えません。自民党改革、政治改革の滅多にないチャンスがきたはずです。

自民党は守勢に回り、野党は攻勢にでられる絶好の機会です。目先の自民党追及ではなく、日本に政治改革をもたらす戦略を描いてみるべきです。

私は野党が政治改革戦線を組み、選挙に臨むよう期待します。各種の政策の違いを捨て、今回は政治改革という一点で連立を組んだらどうでしょう。政治資金規正法の改正、年功に従った閣僚就任の是正、3、40年後の日本の姿を描ける次世代議員の登用、世襲政治の制限、政治資金監視機関や財政独立機関の設置など、論点はいくらでもあります。

メディアも説教調の報道はやめ、二大政党的な政界構造に変化できるような政策提言、助言をしていったらどうか。これからの日本を作り直す「次世代党」とでもいえるような政治勢力を育成していくべきです。

「五界五悪」といって、日本の政治、経済社会には、政界、財界、学界、医界、メディアという5つの悪が存在するとの指摘を聞いたことがあります。この中で政界が質のレベルの低さが最も劣る。政界が立ち直らないと、日本の経済社会を変えていくことができません。

世論調査では「支持政党なし」は52%(読売新聞)という高率です。政党支持率は自公支持率の合計26%に対し、立民・維新・共産・民主は合わせて13%ですぎなくても、「支持政党なし」が動けば、勝敗は左右されます。野党連合が勝てなくても、自民党に対する相当な圧力になるでしょう。

自民党が修羅場をくぐり抜けたかというと、そうでもなさそうです。仏教用語でいう五悪(仏教信者が守るべき戒め、五つの不善)のうち、自民党はそのいくつかを破ったことは否定できません。

「妄語(もうご)はいけない(嘘をついてはいけない)」は破ったとみるべきでしょう。「政治資金収支報告書への不記載は承知していない」、「自分は関与していなかった。事務総長ではなく派閥事務局、会計責任者の担当だった」などと、言い逃れをしました。

派閥の会長、事務総長がいるのに、「派閥事務局」というブラックボックスを存在させ、そこを通した形にして責任を回避する便法です。闇の勢力が使うマネーロンダリング(資金洗浄)の手法と似ています。

「殺生してはいけない(生き物を殺してはいけない)」はどうでしょうか。さすがに「殺人、殺生」はしていなくても、「パーティ券収入のキッバック、納付の留保(裏金)は、政治倫理、政治道義に対する殺生」に相当します。

「偸盗(ちゅうとう=ひとのものを許可なく自分のものにする」にも引っかかってきます。パーティ券収入の一部を派閥に納めず、自分の懐にいれてしまう行為がこれに相当します。もともと少人数の勉強会なのに、「詐称」して、あちこちに声をかけ、大勢から資金を集める。出席はあえて求めず、資金さえ集まればよい。

自民党側には真実を語る気持ちはもともと、ありません。本来なら、政倫審開催を求めた野党側にこそ、新事実を発掘してきて、自民党側を追い詰める責任がありました。「事実関係を語れ」、「政治不信を払しょくせよ」と説教調でした。政倫審は説教をする場ではありません。

テレビ、新聞の大々的な報道に「だからどうなのよ」思った国民がほとんどでしょう。だから視聴者、読者のメディア離れが進むのです。憲法改正や安全保障など、新聞が政策提言に熱心な時期がありました。そのことを思い出してみたらどうなのでしょうか。

「言論の府の権威を貶めるな」(読売社説、2日)、「政治責任を不問にできぬ」(朝日社説、1月20日)などと叫んでも政治的な影響力はありません。もっと期待感を抱かせられるような主張を今こそすべきです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。