仕事の大変さと収入の多さは関係ありません

黒坂岳央です。

「残業が多く、忙しくてクレーム対応も多い仕事なのに給料が低い!」

ネット上ではこうした不満の意見を見ることがある。自分も昔は「仕事の大変さ=収入の多さ」とぼんやり思っていた時期があり、アルバイトや派遣、正社員の仕事を探す時は「この仕事は相場より給料が高いから、きっとハードワークになるんだろうな」と潜在的に不安を感じて避ける判断をしたことがあった。

しかし、今なら分かる。仕事の大変さと収入は関係がないと。少なくとも給与所得者についてはそうだ。その理由を論考したい。

matejmm/iStock

給与が決まる2つのファクター

支払われる給与水準は様々な因子があるも、クリティカルなファクターは2つある。1つ目は企業収益、2つ目は人的資本である。

1つ目の企業収益とは、シンプルに勤務先企業の稼ぐ力で決まる。ITや広告、コンサルといった業界の方が小売業やサービス業より企業の収益力が高い。前者は売価が高く、原価が安いので粗利が高いのに対して、後者はその逆で売価は低く、原価が高いので粗利が低くなる。

手取り給与の高い家庭ほど可処分所得が高くなるのと同じで、企業の収益力が引くければどれだけ高いパフォーマンスを出しても無い袖は振れない、結果給与は低くなる。加えて、粗利が低くなる傾向の産業ほど、労働集約的かつ離職率が高く、非正規雇用率が高い傾向にあるため、市場平均値が低くなるという背景もある。

2つ目は人的資本、つまり労働者の知識、スキル、経験の力だ。筆者は経理財務の仕事をしていたので、転職してきた社員の給与が見えてしまっていた。転職エージェントを使うと、年収の数分の1を紹介料として支払うのでその経理仕訳作業時にその人物の年収がわかってしまうのである。

同じ部署でも役職の違いで年収が3倍、いやそれ以上違うケースや、同年代なのにMBAの有無や難関資格の有無、過去のキャリア次第でまったく違う年収を得ていた人もいた。同じ勤務先でも、より付加価値の高い労働サービスを提供できるなら、企業はその付加価値に対してベットする。仮に2倍給与を支払ってマネージャーにして、その人物のマネジメント力や改革力でチームのパフォーマンスがあがるなら差額分をペイできる合理性がある。

以上2つの要素で給与は大きく変動する。残業が多くても我慢して働くとか、クレーム対応に耐えるといった個人的な頑張りだけでは大きく給与は上がらない。高い粗利を稼ぎ出す企業に転職し、尚且つスキルや経験を積み重ねるのが最大公約数的に最も再現性の高い給与アップ戦略と言えるだろう。

結果につながる努力、つながらない努力

ビジネスにおいては結果の出る努力、出ない努力に分けられる。結果につながらない場所、内容で頑張ってもせっかくの努力が報われにくい。

労働市場における、もっとも実を結びやすい戦略とはすなわち「キャリアプランニング」だと思うのだ。どこで働くか?何を武器にするか?この2つをミスると後続の努力が実を結ばなくなる。逆に言えば、これさえ正しければ、真の実力以上にリターンを狙うことができる。

筆者が働いていたある外資系企業では、派遣社員の中に本当に仕事ができず、おしゃべりばかりして仕事のやる気もほとんど感じられなかった人がいたが、地方の正社員より遥かに給与は高かった。結果に繋がったのは「場所」が良かったと自分は見ている。

今後、企業の国際競争が激化していく。うまく変化に対応して波乗りする場所で働く人と、ジリ貧になる場所で働く人とでは結果に大きな差が出る。また、頑張って仕事で得たスキルや経験の値段も内容で大きく違う。がむしゃらに頑張るだけでは報われない。何よりも戦略が重要なのだ。

 

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