後期高齢者医療制度は廃止して医療制度を「2階建て」に

池田 信夫

日本維新の会の医療制度改革案「医療維新」が発表された。アゴラでもずっと提言してきた「高齢者医療制度の原則3割負担化」が国政政党の公約に入ったのは初めてだ。

ただし財源については疑問がある。この提言では後期高齢者医療制度を税財源化することになっているが、これでは社会保険料の負担を税に置き換えるだけで、国民負担の削減にはならない。

後期高齢者医療を「国営化」するのは無理

後期高齢者への健保組合などからの支援金は2020年度で6.3兆円。これをすべて税で置き換えると、公費7.7兆円と合計で14兆円になる。消費税率にすると約6%。今の10%から13%に上げないといけないが、その半分を75歳以上の高齢者だけに使うわけには行かない。

3割負担にすれば後期高齢者医療の赤字が3~5兆円減る可能性はあるが、保険料負担1.3兆円以外をすべて税負担にするのは、事実上の医療国有化である。今でも厚労省は製薬資本のいいなりに新薬を9割引する傾向が強いのに、国有化したら健保組合の牽制もきかなくなり、医療費の膨張に歯止めがなくなる。

国保に一元化して「2階建て」に

ではどうすればいいか。これについては、後期高齢者医療制度を創設したとき議論になった類型がある。次の図の「独立保険」が自民党や日本医師会の推した方式で、連合は国保と健保OBを別立てにする「突き抜け」方式を提案し、全国知事会などは国保に一元化する「国一元化」方式を求めたが、結果的には独立保険方式に近い後期高齢者医療制度が2008年にできた。

後期高齢者医療制度の改革イメージ(三原岳氏の資料より)

この方式のメリットは健保や国保からの支援金が明確になることだが、それを誰がコントロールするのかがわからない。これは保険でも税金でもないので、負担が厚労省の裁量で決まり、保険加入者のチェックがきかない。

今後これを改革するとすれば、年齢で医療制度をわけるのではなく、医療の必要性に応じて区分する2階建てがいいのではないか。具体的には歯科、眼科、介護、リハビリなどは2階部分で自由診療とし、医療費は民間保険でまかなうオランダ方式である。

1階部分は国保に一元化し、混合診療を解禁する。健康保険料の料率に上限を設け、不足分は税で補う。最初は1階部分がほとんどだが、延命治療や認知症治療薬などは徐々に2階に上げる。政治的には困難だが、これから医療・福祉は製造業を超える雇用最大の産業になるので、その生産性を高めるためには民間参入が必要だ。

この1階部分の税は年金保険料と統合して社会保障税とし、最低保障年金とする。保険料をすべて税に置き換えると税率が巨額になるので、徐々に保険料を税で置き換えてはどうだろうか。

まだ生煮えの案だが、ご意見はアゴラサロンへどうぞ。