維新の後期高齢者医療費3割負担の提案に対して、他の党は与野党ともに沈黙を守っているが、公明党が初めてコメントした。
いま高齢者の窓口負担は原則1割なので、3倍になるということです。
保険料や税の負担がいちばん重い働く世代が、定年で高齢者になった時に今度は窓口払い3倍。
世代間対立をあおる人たちは、いずれ自分も高齢者になるってわかって言ってんのかな。。 https://t.co/KpHzM1e7Ul
— いさ進一 衆議院議員 (@isashinichi) March 6, 2024
いま3割負担にしないと将来の現役世代は5割負担になる
この投稿が200万回以上表示されて1000以上のコメント・引用がついているが、ほとんどがこんな感じだ。
このままでは今の現役世代が高齢者になった時は窓口負担3割ではとても済まない事が分かりきっているから今取り組む必要があるのでは。負担を負うのは自分自身かもしれないが、子や孫たちかもしれない。世代間対立を煽っているのはどっちだろうか。 https://t.co/fdUGVMu73e
— 青柳仁士 衆議院議員<維新> (@aoyagi_h) March 6, 2024
信じられない。公明党の議員も賦課方式を知らないのか。いま窓口負担を3割にしたら、なんで現役世代の定年後の負担率が3割になるのか。
今のまま1割負担を続けたら、現役世代は5割負担でも足りなくなるんだよ。 https://t.co/RFjx5yl1dD— 池田信夫 (@ikedanob) March 6, 2024
重たい社保料負担に我慢の限界であり、今の社会保障制度には持続可能性が全くない事を知っているから高齢者医療負担3割に賛成しているので、今更「おま老」と言われた所で何とも思わない。まさか公明党は今の制度が持続可能と思ってるのか?だとしたら脳内お花畑にも程がある。 https://t.co/Rgx1QsqfKY
— 自由人希望者 (@hopefor_freedom) March 7, 2024
まさか公明党の幹部が、医療保険が賦課方式であることを知らないはずはあるまい。これは今年の保険料を今年の医療給付で使い切ってしまう制度だから、今年の窓口負担と将来世代の老後の負担は無関係である。
9割引医療で医療資源が浪費される
今の9割引医療を続けると、過剰医療で医療資源が浪費される。かつて老人医療の無料化で日本の病床数が世界最高になったように、寝かせておくだけでもうかる老人がベッドを占拠し、病院が老人ホームになってしまうのだ。
その膨張した医療費を負担するのは、ますます人数の減る現役世代である。彼らが老人医療費を支給される立場になったとき、次の図のように医療・介護のコストは今後15年で30兆円も増え、94兆円になる。その6割が老人医療費(65歳以上)である。今は医療+介護で63兆円のうち老人医療費が約40兆円である。
健康保険料の半分は老人医療費に支援金として仕送りされているが、2040年には老人医療費・介護費が60兆円に激増する。おまけに分母の生産年齢人口が1000万人減って6000万人になるので、支援金も激増する。
現役世代一人当たりの老人医療費の保険料負担は現在の60万円から2040年度には100万円になる。そんな状況で、9割引医療が守れるはずがない。3割負担でも無理だ。将来の窓口負担は5割を超えるだろう。
3割負担の目的は受診抑制
それを防ぐ対策も明らかだ。今のうちに窓口負担を増やし、過剰医療に歯止めをかけるしかない。一律3割負担にする最大の目的は負担増ではなく、受診抑制なのだ。
これについて厚労省はいまだに「受診抑制は望ましくない」という立場だが、受診抑制による健康への悪影響はほとんどないというのがオレゴン医療保険実験の結果である。
オレゴン医療保険実験の結果
もう時間は残されていない。団塊の世代が後期高齢者になる2025年までに3割負担を実現し、過剰医療をなくさないと、現役世代の保険料負担も窓口負担も加速度的に増える。
公明党は後期高齢者の党
ところが2020年に後期高齢者の窓口負担を引き上げたときも、公明党は2割負担に最後まで反対し、年収200万円以上に限定した。この成果を全国の公明党地方議員が支持者に報告した。
「みんなの都議会」や「ユーストーク」「語る会」など多くの皆様からのお声が届いた結果です→(75歳以上の医療費)「年収200万円」から2割/「平均収入以上」で決着、急激な負担増抑制も/児童手当、世帯合算見送り #公明新聞電子版 2020年12月13日付 https://t.co/NYlnDGfvki pic.twitter.com/1NWZSyt6XO
— 斉藤やすひろ 東京都議会議員 目黒区選出 (@yasuhirosaitou) December 12, 2020
このとき厚労省は年収155万円以上を2割負担とする案を出したが、公明党は240万円以上を主張した。菅首相は170万円まで譲歩したが、公明党がねばり、結果的に200万円で合意し、2割負担の対象は23%に減った。公明党は、年収240万円以下の厚生年金受給者を丸ごと1割負担にしようとしたのだ。
その理由は明白である。公明党の支持母体である創価学会の会員は、高度成長期に地方から出てきた中卒労働者が多い。彼らは団塊の世代より上で、今は80代になり、まさに9割引医療の受益者なのだ。
しかし彼らも後期高齢者になり、党勢は衰退する一方だ。そこで自民党が170万円と決めたあとで首相とのトップ会談を開催し、公明党が限度額を200万円まで引き上げたとコア支持層にアピールしたわけだ。
問題は公明党だけではない。自民党はおろか、維新以外の野党もみんな3割負担に沈黙している。このままでは社会保障が破綻することはわかっているが、それより老人票が大事なのだ。こういう党に現役世代が鉄槌を下すチャンスは選挙しかない。
【追記】社会保障給付の見通しの計算ミスを訂正した。