見た目を老化させる仕事の特徴

黒坂岳央です。

世の中には実年齢より老けて見える人、若く見える人がいる。これまでその因子は紫外線や食生活、運動習慣にあると広く受け入れられていた。しかし、意外な犯人を浮上させる論文が掲載された。端的にいえば、人生の出来事や結果を自分でコントロールしている実感の有無である。このことをControl beliefs(コントロール信念)と呼ぶ。

自分の人生を自分でコントロールできずストレス過多となれば「歳をとったな」という実感と「見た目の老化」の両方をもたらすというのだ。

人生を自分でコントロールする実感は幸福度に直結することは広く知られているが、見た目の老化にも影響するという話は知っておいて損はない。QOLを決定する非常に大きなファクターとなり得るだろう。

metamorworks/iStock

人は年齢をいくつも持っている

人は社会的に共有される実年齢意外にいくつもの年齢を持つことで知られる。その1つが主観的加齢(Subjective age)である。「自分は◯歳だ」と考えるfelt age、見た目の年齢であるlook ageなどだ。40歳の人は必ずしも40歳の認識をされているわけではなく、見た目が非常に若々しかったり自身を30代という感覚を持っていれば、その分だけ社会的年齢とズレてしまうということがよくある。

興味深いことに、同論文によれば主観的年齢は日々よく動くということだ。他人から「年齢より年上に見える!」と言われれば軽い失望とともに主観年齢を上の年齢へと認識を変えるだろうし、その逆もありえる。そして主観年齢を先へ進める要素に件の人生のコントロール信念なのである。

この話を聞いて連想するのは、中年期まで働いた経験のないいわゆる子供部屋おじさんだ。たまに驚くほど若く見える人がいる。食生活や運動、紫外線など複数の要素の影響度を無視してはならないが、ことコントロール信念についていえばしっかり確保されているために、見た目と精神的若さを維持できている可能性はありえる。逆を言えば、そうでない環境に身を置けば老け込んでしまうということになる。

見た目が老け込む仕事の特徴

見た目が老け込む仕事、その筆頭は裁量がない仕事である。流れ作業、単純作業などはその典型だろう。そして毎日強い紫外線に長時間晒され、食生活も栄養価が偏るならさらに見た目の老化を促進させる可能性がある。一頃流行った写真に、トラックドライバーが顔の一部だけ毎日日光に当たり続けたことで顔の半分だけが老け込んでいるというものがある。コントロール信念以外の影響要素も同時に考慮して複合的に考える必要はあるだろう。

その逆に老け込みにくい仕事を考えるなら、裁量がある仕事だろう。思い当たるのは経営者やフリーである。筆者の地元でよく知る社長は思い当たる範囲で言えば総じて若々しい人ばかりだ。同年代は腰を曲げて杖をついているのに、ブランドで派手に着飾り高級車を乗り回している人もいる。年齢もとても若く見える。

そしてこうした人達は裁量を失うことに強いストレスを感じる。ある社長は経営者仲間と海外旅行へいこうとして、奥さんに強く反発された際に「オレの自由にさせろ!」と大変立腹していた。普段から周囲の空気を読んで「今はそのようにすべきタイミングではない」と行動を慎むということはしない人物である。裁量があることが若さの秘訣なのかもしれない。

人生の幸福度は裁量権が大きく占める。それだけでなく見た目の若さを保つ可能性もあるという。人生全体のQOLを考えると、収入は非常に良いが裁量がほとんどない仕事より、収入はそこまででなくても裁量がある仕事でのびのび生きる方が良いのかもしれない。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。