やるべきこと vs. やりたいこと:人生の優先順位をどう決めるか

黒坂岳央です。

「人生やりたいように、生きたいように過ごせ」といった意見をよく見る。

その一方で「人生は20代(30代)でほぼ決まる。人生前半はハードワークと積立投資!」といったやるべきことを頑張れ理論にわかれる。一体、どちらが正しいのだろうか?

結論的にいうと「まずやるべきこと。やりたいことは義務を果たした後」と考えている。その理由を論考したい。

takoburito/iStock

最初にやりたいことをするな

英語を教えている立場なのだが、「最初からやりたいこと」をしようとして失敗していく学習者を数え切れないほど見てきた。

多くの学習者のやりたいこととは、すなわちペラペラ英会話である。多くの人は基礎力がほぼゼロ、インプットもほぼない状態でいきなり実践英会話をする。結果、丸暗記したフレーズをろくに意味を介さず、口からただ出ているだけという状態が出来上がる。本当の意味で自分が英会話しているとはいえず、他人の考えたフレーズの原稿を思考停止で読み上げている状態になっている。当然、その後の発展性は皆無である。

アウトプットはインプットしたものを出す行為なので、インプットなきアウトプットは論理的に考えてもありえない。だからこの場合、まずは基礎という重要性が高いが、やりたくはないことからスタートしなければいけない。

まずはやるべきこと、やりたいことはその後でという考えはすべてに通じると思っている。自分自身、起業して今は自由になれたという実感があるが、それは起業活動をスタートさせた初期の頃にやるべきことだけをフルコミットしたからという感覚がある。

会社員をしながら、土日祝、朝の出勤前のすべての時間を起業にあてた。ものすごいハードワークだが、ビジネスからの収益で食べられるようになって、専業起業家になり、今へとつながっている。専業でビジネスを始めた頃も、とにかく食い扶持を稼ぐために、あまり興味がない仕事も含めてたくさん働いた。長い年月を経て、ようやくやりたいことだけで食べている状態を得た。

最初からここには来られなかった。最初から何もかも自由にはできないのだ。

やるべきこと中毒にご注意を

その一方で、いつまでもやるべきこと中毒になってやりたいことを永遠に先送りにしてしまう生き方も問題である。

DIE WITH ZEROという有名な書籍では、多くの人は仕事の引退後、資産の取り崩しどころか永遠に資産を増やし続け、死ぬ直前に人生最大のお金持ちになってあの世へ旅立つ話がかかれている。冷静に考えたらおかしな話だ。だが、やるべきこと中毒はよほど意識しないとほとんどの人が感染してしまう病である。

たとえばある程度の蓄財が進み、十分独立して食べていけるだけのスキルと経験、実積がある。できれば起業したいが「不安なのでまだまだサラリーマンでタイミングをまとう」というのはもったいないという話だ。

十分なタイミング、は永遠にやってこない。最低限の準備が整っているなら、同時並行期間を設けてでも、今すぐ独立して少々見切り発車気味にでもビジネスをするべきなのだ。必要なスキル実績は後からついてくる。自分自身がそうしたので「完全に準備が整ってから退職する」と言われるたびにそう思う。「もっと早くやればよかった」と後悔するだろう。

やりたいこと、やるべきことはバランスが重要だ。やるべきこと中毒になればやりたいことができないまま老化が進み続けるし、やるべきタスクを終えずにやりたいことはできない。とかく短期思考で考えがちだが、人生全体を最適化、合理的にマネジメントするスキルが重要なのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。