財布に優しい国「ジャパン」:日本が売られる5秒前

谷本 真由美

以下は2023年7月8日に発売された私の書籍『激安ニッポン(マガジンハウス新書)』の抜粋です。

日本は激安なお買い物が可能な非常にお得な国状態になっています。

ただし日本でお得なのは日本で報道されるようにホテルや飲食だけではありません。全てが激安になりつつある日本では人生を左右するような重要なものやビジネスに必要なものが非常に安くなっているわけです。

ところが日本の人々は日本のものがどれだけ安いかということを意識していないので外国人が大挙して買い物をしていることを知りません。

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外国人が海外の不動産を買う理由

まずお買い得なものの一つが日本の不動産です。

日本の皆さんにはあまり実感がないかもしれませんが、先進国だけではなく途上国でも海外の不動産を投資目的や居住目的で買うことは珍しいことではありません。

特に中流以上の階層だと余剰資金は銀行の貯金や株式投資に回すのではなく、海外の不動産を買ってそこから賃料を得たり将来的に転売してお金を儲けるというのが全く珍しくありません。

例えばこれが非常に盛んなのは北米や欧州北部の人々です。これらの国々の不動産というのは日本に比べると寿命が長いので中古の不動産を買って、それを賃貸に出して家賃をもらったり将来的にそれを転売して老後資金にすることが割と一般的です。

また子供が進学する際に大学の近くの不動産を買って在学中は子供に住んでもらい卒業後は他の学生さんに貸し出して家賃をもらったり、将来的には自分の老後資金にしたり子供の独立用の資金にしたりします。

日本の感覚だとずいぶんリスクの高くて面倒くさいことをやるなあという感じですが、なぜこれらの国で大家さんになることが珍しくないかと言うと、中古でも不動産の値段がどんどん上がっていくからです。

日本と違って新築の家を建てる規制が少なくないので家の数があまり増えません。多くの人が中古の不動産を買って住むことになるので中古の不動産を売買したり貸し出すことが一般的なんです。

アメリカは木造の家が多いのですが、日本よりも乾燥しているので家が劣化することが日本よりは少ないです。

家の構造も日本よりは単純ですから修理がしやすくなっています。

欧州北部の場合は基本的に家の作りが全く日本と違い、石を積み上げて建物の骨組みができていたりレンガで骨組みができています。

こういう骨組みの上に漆喰を塗って床には腐食しにくい木材の分厚い床をはります。ですから何十年どころか何百年も持つという家もあります。

日本だと木造の家は特に戦後急ピッチで建てられたものは30年もすると大幅な直しが必要になります。

屋根が剥がれてきたり床が不足して抜け落ちてしまうなどということが珍しくないので、修繕費に数十万円から数百万円かかることが珍しくありません。

また木材も安いものが使われていて他の化学的な素材も劣化がかなり激しいので、結局全て立て直した方が早いという例が少なくありません。

北米や欧州の家というのはこういった日本の家の作りとは全く違うので中古市場が活発になるわけです。

彼らは不動産というのを投資のポートフォリオの一部に考えるので、海外の良さそうな物件もよく見ています。投資価値があると思うものは購入して自分の資産にするわけです。

一方、発展途上国の人々も海外の不動産を買います。

特に彼らが欲しがるのが先進国の不動産です。なぜかというと先進国というのは法律が整備されているので不動産を買っても他人に不法占拠されたり取られてしまうということがないので安全だからです。これは反対に言うと発展途上国では自分の買った家が他人に勝手に乗っ取られてしまうということは結構あります。

しかも国によっては一般の人は土地を所有できず土地を所有できるのは国だけというところが結構あります。つまり土地の所有権がないわけです。

その割には不動産の建築には様々な規制があるので数が多くありません。したがって値段がどんどん上がってしまうのです。工事も手抜きがひどく汚職もひどいので不動産の質もかなり微妙です。

そこで先進国のきちっと規制がされていて品質も保証されている不動産を欲しがるわけです。

しかも先進国だと政変や内覧が起こる可能性があるので非常に安定しています。しかも建物の品質や職人のレベルも高いので安心して家やマンションを買うことができます。そして外国人であっても土地を所有できたりするのです。