ファンタジーではない「潰れない会社」のリアル(横須賀 輝尚)

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「さおだけ屋はなぜ、潰れないのか?何をやっているかわからない高校生インフルエンサー社長の会社は何をやっているのか?”成功の秘訣はプロフに”とSNSに投稿している人は本当に成功しているのか?ファンタジーの裏にある、潰れない会社のリアルをお伝えしようと思います。」と言うのは経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。

潰れる会社とは逆に、潰れない会社の実態はどんなものなのか?今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。

なぜ、あの会社は潰れないのか?

まず、身も蓋もない大前提を言っておくと、絶対に潰れない会社などありません。絶対的神話のあった銀行が潰れることもありますし、時代の寵児と呼ばれる社長率いるIT企業も崩壊することがあります。

まあ、税金が投入される政府や自治体が関与する会社はもしかしたら潰れにくいのかもしれませんが……。ですから、ここで解説するのはあくまで一例。そして、そういう傾向があるということで、「目安」にして頂ければと思います。

本題に入る前にもうひとつ前提。それは、「見えているものがすべて正しいとは限らない」ということです。

例えば典型例がSNSの情報。有象無象の情報がこれでもかと散見されます。若くして成功した起業家が海外で豪遊する投稿や、何をしているのかわからないのにフォロワーが何万人もいる社長。こうした投稿を見ると、多くの人が成功しているように見えます。

しかし、実態は誰にもわかりません。えらっそうに人生訓なんかを投稿している社長が、実は顧客から訴えられていることもあります。よくわからないインフルエンサー的に自撮りばっかり投稿してチヤホヤされている社長も、実は事業では結果が出ておらず、親族の会社に食べさせてもらっていることだってあります。

インターネット上にある情報は、ファンタジーなのです。

まあ、根拠を挙げている場合はそうでもないのかもしれませんが、特にSNSの情報は鵜呑みにしないほうがいい。だって、私が知っている限りでも、豪華絢爛な投稿はその人の生活のごく一部でしかなく、実際はかなり寂しい生活を送ってる、なんて社長もいっぱいいますからね。特にSNSはファンタジー。本当に世の中、嘘ばっかりです。

今回はそういうファンタジーでない、私のコンサルタントとしての経験とプロ士業への取材でわかった「現実」をお伝えしようと思います。

小さくても絶対に潰れない会社が持っている「差異」とは?

潰れない会社は強いビジネスモデルを持っています。もちろん、こういった構造だけでも強いのですが、構造だけだと他社との競争になってしまうことがあります。

そんな競争に強い会社が持っているのが、いわゆるその会社独自の「強み」です。USP(Unique Selling Proposition)ともいったりします。その会社にしかない製品。その会社にしかできないサービス。こういった強みがあると、 他社との競争になりにくく、また他社が参入しにくいいわゆる参入障壁をつくることができます。

と、一般論としての説明はこのような感じなのですが、解説し出すと一冊の書籍でもとても解説しきれないので、いくつか企業例を出しておきます。

(1)ダイソン
USP…吸引力の変わらないただひとつの掃除機

(2)iPod(Apple)
USP…“1,000 songs in your pocket.”
「ポケットに1,000曲のミュージックライブラリを」

(3)FedEx
USP…“Safe, reliable overnight delivery for your important packages”
「お客さまの大切なお荷物を、安全に、そして1日で確実にお届けします」

USPとキャッチコピーの関係性などはちょっと説明しきれないのと、メインテーマから少し外れるので、またいつかどこかで。

会社を潰させない経営者の条件─目立つ社長、目立たない社長─

会社を潰す社長の共通要素について考えてみると、詰まるところ会社経営が「私利私欲」なのかどうかが、分かれ目のような気がします。

自分のためだけにお金を稼ぎ、自分のためだけにお金を使う。人間の欲望とは恐ろしいもので、最初は謙虚で慎ましかった生活も、一度味を覚えてしまえばその欲は無限の広がりを見せます。虚栄心や見栄も暴走します。

だから会社のお金を私的に使うようになるし、多くの称賛を受けられるセミナー講師など、自分が目立つ場所を探すようになる。そして、SNS時代には「いいね」やフォロワー獲得のために「成功投稿」はどんどんエスカレートしていく。

結局、会社を潰さない社長というのはこの逆で、家族のため、社員のため、顧客のため、もう少し大きく言うと日本のため、そして世界のために会社を経営している人なのではないかと思うのです。

もちろん、社長によってそのスケールは違います。家族や社員を守りたいという社長もいれば、この国を救いたい、世界を平和にしたいなんてスケールの社長もいるでしょう。

そうなってくると、「理念」に立ち戻ることになります。「なぜ、その会社をやっているのか?」という問いです。この問いに、心の底からいえるパブリックなメッセージがある社長というのは、会社を潰しにくいのではないかと思うのです。

結果、最適化をすれば社長のプライドや虚栄心の優先順位は下がっていくはず。となれば、ビジネス形態にもよりますが、徐々に社長というのは目立たない存在になっていくのではないでしょうか。

もちろん、PR自体はいいことなのですが、それが売上に直結しているのかどうかが肝要です。本業そっちのけで、自分が目立つ仕事を率先して受ける経営者は、自分の虚栄心を制御できていません。チヤホヤされている社長より、地味で目立たない社長のほうが、会社を潰さない経営をしている可能性が高い、ということは言えると思います。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年3月11日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。