「やる気アップ活動」はムダ

黒坂岳央です。

SNSや動画配信サービスでは「やる気がアップする◯◯」といった投稿が人気だ。自分自身、求められてそうしたものを提供することもある。同時に「やる気アップなんて求めるな」とハッキリいうようにしている。理由はムダだからだ。

世の中でビジネスや勉強で成功した人をそれなりに見てきたが、結果を出す人でやる気アップに駆け回って成功した事例を見たことがないのだ。

ビジネスでも勉強でも、やる気アップより環境整備の方が遥かに重要である。その理由を論考したい。

koyu/iStock

ニワカは本物に勝てない

できるだけ意図を伝える目的達成のため、あえて突飛な表現を使うならニワカは本物には勝てない。どれだけやる気アップに駆け回ってやる気を高めるものを集めても歯が立たないのだ。

ここでいうニワカとは能力が低い人のことではなく、自発的に頑張れず、外部に行動するエネルギー源を求める必要がある人と考えてもらいたい。本物はこの逆だ。

ビジネスでも勉強でも、結果を出すには自燃でなければ長期で継続できない。単純に燃焼期間だけでなく、燃焼パワー自体も違ってくる。24時間ずっと仕事のことを考えて、休憩にもつい仕事の成果物の分析をしてしまうような人と、最初の一歩を踏み出すのに毎日苦労し続ける人ではどうやっても勝ち目はないだろう。

こういう事を言うと「成功する人は努力できる才能が違うから仕方がない」という人が出てくる。本当だろうか?人間が頑張る理由は知的好奇心や集中力など、先天的な能力も確かに影響する事実は否定できない。

しかし、両者を分ける大きな差の一つは環境だと思うのだ。

やる気より環境整備

個人的には「やる気」といった水物で頼りないものを拠り所にする戦略が間違っており、「環境整備」といった盤石で再現性の高い工夫で取り組む戦略こそが重要と考える。

自分は高校までまったく勉強ができなかったので、通っていた学校も良くなかった。不良ばかりで勉強をする姿を見せると「ガリ勉くんダサい」とバカにされてしまう環境だった。図書館もヤンキーのたまり場だ。このような環境ではどんな人もダメになる。やる気なんてどうやっても出しようがない。強力なブレーキがあるためだ。

しかし、進学校にいけばやる気は自然発生的に湧き上がる。勉強しやすい静かな空間、周囲が当たり前のように長時間勉強して前向きな言葉で溢れている。どれだけ勉強嫌いでも確実に触発される。しかも効果は長期で持続する。こちらの方が一時的なやる気頼みより、よほど信頼性も再現性も高い。

自分は米国の大学留学先で、授業開始前に教室で前列の席を順番待ちしている様子を見たり、外資系企業で夜中3時まで働く外国人社員の姿を見て大いに触発され、「自分も負けないぞ」と自然に思うようになった。

やる気を外部に求めてばかりいる人の話を聞くと、今の環境が悪いままで頑張ろうとしていることが少なくない。周囲に自分の頑張りを応援、理解してくれる人が皆無だったり、睡眠不足や栄養不足だったり、落ち着いて集中できる空間や時間がなかったりする。これではどれだけやる気アップをしても、環境が悪いのですぐにやる気の火が消える。やる気がないと始められないのは環境が悪い。まずは環境を整えることが先決だろう。

筆者は本気で勉強や仕事を決意してから、「やる気アップ」という概念を意識したことはない。徹底的に頑張るための環境整備を整えてきたからだ。環境が整っているのでまずやる、やるからやる気なんて無制限に自家発電できるのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。