パリ国立オペラ座バレエ”イリ・キリアン特集”

パリ国立オペラ座バレエ、「イリ・キリアン」プログラム。

今年最後のパレ・ガルニエ。フォワイエの巨大サパン、今年はラデュレとのコラボで、ラデュレらしいラヴリーに包まれててかわい~♪

久しぶりのキリアン特集。4作品中3作が、オペラ座バレエ初上演。

“Gods and Dogs”。08年作。う~ん。前半暗すぎるのイヤだし、ダンサーたちの存在感ない。ベートーヴェンが流れはじめてからはなんとか見られるけど、今度は音楽が汚い。スピーカーのせいなのが音源のせいなのか・・・。ベートーヴェンに申し訳ない。

銀鎖の背景はきれい。ともすれば、ダンサーより鎖の動きに目が移る。

“Stepping Stones”。91年作。20年以上前からオペラ座レパートリー入りしてるので、何度か見てる。古代の神秘がケージとウェーベルンの音楽と絡んで、プリミティフな美しさ。

こういう作品、正確さによる没入感がとても大切で、ちょっとでもブレると神秘の世界から現実に一気に戻っちゃうので、ダンサーの質が大切。だからかしら、4人エトワールでしっかり体制。

リュドミラ文句なしに作品に溶け込んでる。相手、パブロの方がキレッキレになってよかったと思うけど、全てのカップルにいい人一人入れなくちゃいけなかったのでしょう。

“Petite Mort”。91年作。コンセプトも振り付けも、シュールなバロックという感じで嫌いじゃない。モーツアルトにあってる、でも、やっぱり音がねぇ。もったいないな。ダンサーたちはまあまあ。

“Sechs Tanze”。86年。休みなしでそのまま上演、モーツアルトつながり。モーツアルトの”6つのドイツ舞曲”に乗せて(音質~涙)、作曲家が生きた時代のバロックな貴族社会を、ユーモラスにキッチュに表現。笑えるけれど、あくまで上品さを保ちつつのユーモアであってほしい、と感じるダンサーたちも。前作もこちらも、NDT1に振り付けたそう。確かに若い子が似合う作品。

この音楽、プレルジョカージュが「ル・パルク」でも使ってて、こちらは典雅で優美な宮廷ドラマを見事に表現してる。ダンサーの表現力の問題もあるのだろうけど、この音楽だけ切り取ると、キリアン < プレルジョカージュ。

極めて正確なキレとしなやかさのコントラスト、そして神秘的なオーラ。これがないと、キリアン踊るの難しいのね、と改めてしみじみ。

また来年!


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。