柏崎刈羽原発、再稼働はあるか?

なんとなく終わってしまったのが自民党の裏金問題に関する野党の追及。結局政倫審でほぼ何も上げられず、証人喚問も実現の道は遠そうです。本件舞台は自民党内の処分に焦点が移ります。個人的に注目しているのが二階氏への対処で、もしかすると処分前後に離党するというウルトラCが出てこないとも限らない気がします。それは氏のプライドと年齢的問題、さらには党内での求心力が弱っていることがあります。ただ、弱っているのはそれだけではなく、足腰もよぼよぼ。私にはもはや妖怪にしか見えません。

では今週のつぶやきをお送りします。

アップル社の弱り目に祟り目

アップル社への包囲網が厳しい状態になっています。アメリカ連邦司法当局およびカリフォルニアなど一部の州の司法長官が同社を独占禁止法違反で提訴、また欧州では同社とグーグル社がデジタル市場法順守問題で全面調査が入ると報じられています。特に痛手なのがアメリカの独禁法違反の提訴で訴訟の展開は数年を要するとみられます。アップル社は今回の提訴に対して「事実上も、法律上も間違っている」と反論(ブルームバーグ)とあり、対決の方針を示しており、今後、泥沼の戦いを余儀なくさせられます。過去の事例からはこの問題に足を突っ込んだら解決までは守りに入るので経営的に冴えない状態になりやすくなります。

アメリカの大手ITを狙い撃ちした司法当局の提訴はマイクロソフト社をはじめほぼすべての大手に及んでおり、今回のアップル社提訴はある意味「今更感」すらあるのですが、民主党政権が大手ITの解体を叫んでいたことを思い出すにつれ、大統領選挙戦の一環であろうと考えざるを得ません。一方のアップル社としてはApple Car開発を断念し、弱いとされるAI開発に人材を振り向け、それでも厳しそうなのでグーグル社の生成AI「ジェミニ」をiPhoneに組み込む交渉を行っていると報じられています。正直、iPhoneを使っている者としてAIに関しては強みがなく、Siriの言語理解能力も低く、今更、あぁ、iPhoneにAI、ありそうでなかった組み合わせかも、と気が付いたぐらいです。

当然、同社の株は下落傾向が続いており、比較的高値で張り付いている他の大手ハイテク各社に対してテスラ社とともにさえない状態となっています。一部のアナリストも弱気を示し始めています。Apple Car開発断念のブログを書いた際に私はいまだにアップルはジョブズの思想的遺産が牽引役で新たな開発能力が現経営陣にはあまりないという趣旨のことを申し上げました。アップルという会社はジョブズが抜けた1985年から96年の間に経営的に非常に苦しみ、死にかけました。そしてジョブズが戻ってきたときのキャンペーンがThink Different でした。今の同社の経営陣に改めて捧げたいのがこの言葉ではないでしょうか?

柏崎刈羽原発、再稼働はあるか?

地元の方の意向を無視してあるなしを述べるのは失礼極まりない話ですが、それでも再稼働への期待が高まっているのは事実です。再稼働派に言わせれば現在原発が動いているのは西日本だけで東日本はゼロ。が、東京という巨大都市を抱える東京電力管内として柏崎刈羽原発の再稼働は悲願であります。また電気代が高騰する現在でも今は政府が支援しているので各家庭では感じにくいかもしれませんが、それが無くなればぎょとするほどの金額になるでしょう。それを少しでも緩和するためにも原発再稼働は期待が高まるというわけです。

東京電力の株価はこのところ2011年の震災以来の高値となっていますが、その理由の一つは原発再稼働の可能性を囃したものです。このところ、関係者の発言で一喜一憂し、この巨大な発行株式数の会社の株価がゴムまりのように跳ねるのです。現時点で最新の情報は「柏崎刈羽原発の再稼働、国が前面 政府、新潟知事に理解求める」(日経)で新潟県知事は県民に丁寧に見極めていくと説明しており、スタンスとしてはニュートラルだと思います。言い換えれば県民、あるいは原発のそばの住民が理解を示せばGoがかかる公算はあるとも言えます。

原発再稼働については賛否両論入り混じっていますが、私が感じるのはこの10数年に及ぶ様々な対策への評価よりも各自の信念に近いものになっています。こうなると何をどうやっても反対派は反対になってしまいますが、我々の頭のレベルでは理解しにくいものだけに専門家の意見は尊重すべきだと考えます。よって23年12月末に原子力規制委員会が出した運転禁止命令の解除は重い判断であります。もちろん、政府は現在の原発の終わり方も計画すべきだし、新型の小型原発への開発移行も検討すべきでしょう。思考停止は一番よくないわけで震災が多い日本であるがゆえにより安全でより高度な技術を積極的に取り込む姿勢は維持したいところです。

柏崎刈羽原子力発電所 東芝HPより

普通の国になるのか、失われつつある中国パワー

バンクーバーは97年の香港返還前に香港人が大挙して移民し、その後、ビジネスをやっても儲からない当地を捨て去り、その入れ替わりで本土系中国人が占拠した歴史があります。本土系中国人の熾烈なる不動産買い漁り、高級車ベントレーは奥様の買い物車と化し、高級レストランにいるのは中国人の金持ちばかり、というシーンに辟易とした時代を経てきました。そして今、その当時の勢いはなく、安い食材を売る中華市場は込み合い、特段背伸びをした生活をしている感じも見受けられなくなりました。そう、普通の中国人に戻ったように見えます。

全人代後、中国政府の動きもパッとした感じがせず、むしろ、香港で施行された国家安全条例を通じて「中国はより強固な姿勢で外国を監視する」という姿勢にしか見えません。オーストラリアはそれを受けて香港渡航に注意喚起を促しています。中国への直接投資を見ても2月は1020億元で前年同月比27%下落であり、その下落傾向は止まっていません。中国とロシアの関係はより緊密になっているようですが、個人的には傷のなめ合いに感じます。

国家の組成要素である国民はそれぞれ無限の能力を持ち合わせています。しかし中国共産党がその伸びしろに蓋をするばかりか、人々のチャレンジ精神をあきらめに変えてしまったことは国家の育成という観点からあまりにも大きな代償を払っていると考えています。中国共産党は権威主義でもあり独裁国家、そして一切の枠組みからの踏み外しも容赦しない厳密で原理主義的な方向に走ります。国民はその色に染まるというより素知らぬ顔をして、声も上げない、だが、色にも染まらないそんなふうに見えます。とすれば中国は14億の民が生み出す自律機能としての経済活動はあり得ても世界を凌駕する事態にはなれないでしょう。地球規模で見た場合、大きな損失であることは確かです。

後記
私どもが入居するシェアオフィスにイラン系の人が多いのは知っていました。が、3月19日、事務所で働く人が極端に減り、翌20日は30社ぐらい入る中で出社したのは5人程度。これはペルシャ歴の新年が今年は3月20日だったためでラマダンと重なった今年はイラン系の人は誰も来ず、ということです。私もこの事務所には10年近くいますが、いつの間にかイランの包囲網にいたのか、と思うと苦笑いしかありません。平常時は多くの方はイラン語でやり取りしているので私どもは蚊帳の外。逆に言えば何を言っても通じないという強みがあるのかもしれませんが。でもここはれっきとしたダウンタウンの事務所ビル。類は友を呼ぶ、ということでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月23日の記事より転載させていただきました。