年度末。来期に向けて若者へのメッセージ:賢くなる消費者にどう対応するか?

3月末を迎えました。日本で4月1日は正月とともに節目の時となります。来週から新入生に新入社員、新年度入りと「新」の字が並びます。気分一新あらたなスタートに期待したいところですが、さてさて。

byryo/iStock

景気の面からすると2月の景気DIが2か月連続減の43.9となっています。理由は節約志向と解説されているのですが、本当にそうなのかな、と思うのです。それより欲しいものがない、あるいは手に入らない、あるいは消費者が賢くなってメリハリ消費をしている、そちらの方が正しい答えである気がします。最近の消費動向をみるとSNSなどでの情報流布から特定の商品に販売前から前人気が異様に高まり、それに「提灯」と称するコバンザメのようなフォロワー型消費者が人気を煽ることで一部の消費に偏りが生じる、それの方が正解なのだと思います。

つまり消費者の財布が開かないのではなく、欲しいものが出るまで開けないのではないでしょうか?これは景気を読み解くうえで大きな違いになるのですが、統計数字ではその違いが出ないのです。

次に消費者がオタク化しており、特定のモノに特定の人たちが群がるのですが、その他一般大衆からすると「なんでこれをみんな欲しがるのだろう」というギャップ感があるので日本全体として本当に景気が良いのかわかりにくいこともあります。かつては大型商品が出れば日本中が話題になったのです。ウィンドウズとか大型テレビとか、テレビゲームといったものです。ところが最近はその手の話題がめっきり減ったと思います。理由はすべての人々にインパクトがある商品が生まれてきていないことがあります。

この理由の一つはハードの時代からソフトの時代に移ったこともあるでしょう。物欲といえばハードのモノというイメージが強いのですが、消費者は目立たないソフトの部分で消費が進んでいます。たとえば月々の携帯電話代はソフトの消費ですが、それについてはマストであり、何が何でもその支出は維持します。携帯料金やサブスク、フィットネスといった無形のサービスに近いものの支払い額が増えていることが家計の一定割合を占めるようになったのですが、消費者にとって満腹感がないので「景気、そんなに良くないよ」というイメージなのかもしれません。実態としてはちゃんと何かに消費しているはずです。

では4月以降である来期の日本の景気はどうか、といえば日本人の消費動向についてはさほど変わらないと思います。仮に賃上げに高額のボーナスが支給されても昔のように〇〇を買うというより手堅くNISAとか貯金に回るとみています。それでも個人の家計部門は財政的健全化が進むはずなので何か欲しいものがあっても比較的手が届きやすくなっているはずです。とすれば企業側はいかに消費者が欲するものを生み出すかになると思います。

一方、企業は人口減の日本より海外進出や海外向けの売り上げに依存する形になるとみています。海外進出は多くの企業にとってハードルが高かったのですが、そこを乗り越えたいという中小企業は増えてくると思います。ただ、海外でも消費者は賢くなってきており、Made In Japanのバリューは30年前とはまるで違います。その商品の何がどう違うのかを消費者に訴えることが必要でしょう。

私は先日、日本で医療現場用のマッサージ器を破格の10万円ほどで購入したのですが非常によくできています。業務用なので耐用性も高く良い買い物だと思っています。ただ、思うに複雑に作りこみすぎてきて単純機能が好きな外国人には受けないだろうな、と思います。そのあたりは日本のこだわりと海外の期待度のギャップを理解していただかねばならず海外向けマーケティングのいろはから検討する必要はあるでしょう。

私は海外から見ていて日本に自信をもっと持ってほしいと思います。その点、最近は賃上げが進み、企業が値上げすることに躊躇しなくなったことは大きな変化だと思います。電気代の支援が5月で打ち切りになると報じられていますが、たぶん、今の状況なら大丈夫な気がします。1年前のコロナからの夜明け前の雰囲気とは全く違います。「夜明け前が一番暗い」というのはよく言ったもので街角インタビューで不安交じりの多くの日本人たちが「私は一生マスクし続ける」と言わんばかりでした。

新入生や新入社員に捧げたい一言があります。

「日本が当たり前のように一番であった時代は昔の話だ。今はどの国も切磋琢磨している。我々も彼らに負けないようもう一度、懸命に努力しようではないか。そうすればまた一番をとれる日も来る。ただ、一番を取ることだけが大事なのではない。それよりもそこに至るプロセス、苦しみ、努力、積み上げといった地道で目立たない部分に価値を見出すことがもっと大事なのだ」と。

若者の感性は我々が想像できる域を超えてきていると思います。その彼らの自主性を見たいと思います。コロナを乗り越えた学生たちが社会人になる、その時の試練と耐え抜くチカラこそこれからの人生を明るくするものになるでしょう。

私は来年度に大きな期待をしています。そしてきっと飛躍するでしょう。楽しみにしています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月29日の記事より転載させていただきました。