忙しさは量より質で考えよう

黒坂岳央です。

「忙しいことはいいこと、悪いこと」

日々、このテーマであちこち議論が繰り広げられている。概ね、ざっくりとした印象のところでサラリーマンにとっては忙しさとは有能さ、人望を示すポジティブなものに対して、フリーや経営者はその逆というイメージがあるのではないだろうか。

その理由として、サラリーマンは仕事を受けてさばく立場なので、優秀だとより多くの仕事が集中して結果として忙しくなる。また、フリーや経営者は仕事を自分で作る必要があるので、忙しさを上手にハンドリングして得た余暇時間は未来の粗利を作り出す源泉になる。こういった両者の違いがある。

状況や立場の違いはあれど、個人的には忙しさは量で語るのではなく、質で考えるべきだと思っている。

mapo/iStock

質の低い忙しさ、質の高い忙しさ

質で考えろ、ということは質が高い、低い忙しさが存在するということだ。

質の低い忙しさとは何か?仕事においては労働生産性と直結する。たとえば質の低い忙しさとは新人社員に電話番をさせたり、議事録を取らせるという仕事を任せることがこれに当たる。

新人は知識や経験が不足しているので、何をやっても時間がかかる。突発的な対応や状況判断が必要な電話対応をさせたり、内容の理解が伴わない中で質の低い議事録を作らせるのは明らかに悪手だ。結局、ベテラン社員に聞いたり確認したりと手間がかかるので、トータルでチーム全体の生産性が低下する。それなら最初からベテランがやって確実に片付ける方が効率的な場面もある(もちろん状況によって変わる)。

最近だと議事録を取るならAIがいい。新人は議事録の取り方を訓練するより、AIの使い方を覚える方がよいだろう。こうした労働生産性が低い忙しさは疲労やクリエイティビティを損ない、思うように仕事が進まずイライラするが肝心の粗利を稼げないということが起きる。

一方で質のが高い忙しさはこの真逆だ。つまり、労働生産性が高まる活動で大部分の時間を過ごすということである。

たとえば生成AIの使い方を覚えるのは誰でも最初は時間がかかる。AIは魔法の箱ではなく、巧みな質問、プロンプトを求められる技術職である。故に取得には時間を要する。最初は「これなら自分でやったほうが早いのではないか」とやきもきする瞬間があるが、今苦労したり忙しくなっても時間の使い方としてトータルで考えるとAIの使い方を上達させる方がメリットが大きい。

質の高い忙しさの先にあるのはヒマ

労働生産性をひたすら高め続けるという質の高い忙しさに身を置くと何が起きるか?それは将来的に、圧倒的なヒマの獲得だ。

同じ作業の繰り返しなら自動化や生成AIへ任せたり、フリーに外注して対応してもらうということができる。そうするとそれまで自分が手を動かしてやっていた時間が丸々浮くのに、生産性は同じままだ。こうした生まれた余暇時間を使って、新しい仕事に挑戦したりさらに仕事の生産性を高めたり、またはのんびりとヒマを楽しむということができる。筆者の場合、のんびり遊ぶのが苦手な質なので、ヒマを得たら次の新しい仕事のことを考えたり、クリエイティビティを楽しむことをしている。

「忙しさは悪」と考える人がいるが、同じ忙しさでもよりよい未来を作る質が高い忙しさなら積極的に忙しく働くべきだろう。忙しさは量で考えるのではなく、見るべきは質なのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。