再エネTFが反対する「容量市場」って何?

池田 信夫

4月から容量市場の拠出金の支払いが始まりました。といっても一般の消費者には何のことかわからないと思いますが、いま話題の再エネタスクフォースは、これにしつこく反対してきました。それはなぜでしょうか。ジェミニにきいてみました。

GPT-4

Q. 容量市場って何ですか?

容量市場とは、再生可能エネルギーの不安定性をおぎない、将来の電力需給バランスを維持するために、4年後の供給力(kW)を市場メカニズムに基づいて調達する制度です。

従来の卸電力市場では、実際に発電された電力量(kWh)を当日取引します。一方、容量市場では、将来の電力需要ピーク時に十分な発電能力を確保することを目的に、4年後の供給力(kW)を取引します。具体的には、古い火力を廃止しないで温存することが多い。

Q. その目的は何ですか?

容量市場の主な目的は以下の3つです。

  1. 電力需給バランスの維持: 再エネが増えると火力の採算がとれなくなって供給力が減るので、電力需要ピーク時の供給不足を防ぎ、安定供給を確保する。
  2. 電源構成の多様化: 競争メカニズムを通じて、効率的な電源構成を実現する。
  3. 脱炭素化の推進: 再生可能エネルギー等の導入促進に貢献する。

Q. そのしくみはどうなってるんですか?

容量市場のしくみは、以下のとおりです。

  1. 目標容量を設定: 電力広域的運営推進機関(広域機関)が、4年後の最大需要を予測し、必要な供給力(目標容量)を設定します。
  2. 広域機関が発電事業者から供給力を買う: 広域機関が容量オークションを開催し、発電事業者は応札して4年後の供給力(kW)を売ります。今までに約1兆3000億円の契約が成立しました。
  3. 容量拠出金の支払い: 需要家は、小売業者を通じて発電事業者に対して容量拠出金を支払います。

日本経済新聞より

Q. 再エネTFが容量市場に反対しているのはなぜですか?

  1. 再生可能エネルギーの導入を阻害する:再エネTFは、容量市場は再エネの導入を阻害する制度であると主張しています。
  2. コスト増加につながる:再エネTFは、容量市場は新電力のコスト増につながる制度であると主張しています。
  3. 既存の電源事業者を優遇する:再エネTFは、容量市場は既存の電源事業者を優遇する制度であると主張しています。容量市場では、すでに発電設備を保有している事業者が有利になり、新電力はコスト増になります。

Q. エネ庁はどう反論してるんですか?

再エネTF以外の有識者とエネ庁は、次のように反論しています。

  1. 再生可能エネルギーの導入促進:容量市場は、再エネの導入促進に貢献する制度であり、それに再エネ業者が反対するのはよくわからない。
  2. 電力需給バランスの維持:容量市場は、電力需給バランスの維持に貢献する制度であり、大停電を防ぐために必要です。
  3. 新規参入の促進:容量市場では、発電所をもっていない新規参入事業者も、市場で容量を調達すれば平等に競争に参加することができます。

Q. 容量市場なしだと大停電が起こるんじゃないですか?

はい、その通りです。2021年2月、アメリカのテキサス州で大規模な停電が発生しました。この停電は、寒波による電力需要の急増と、電力市場の機能不全が原因とされています。

テキサス州は、energy only marketと呼ばれる電力市場モデルを採用していました。このモデルでは、容量市場なしで電力価格の変動を通じて需給バランスを調整します。

2021年の寒波では電力需要が急増し、電力価格は高騰しました。しかし電力供給は需要に追いつかず、大規模な停電が発生して20人以上が死亡し、電力会社が経営破綻しました。

この停電はenergy only marketの弱点を露呈しました。これは効率的な電力市場モデルですが、需給バランスの維持には脆弱な面があります。テキサス州は大停電を教訓に電力改革をおこない、容量市場を導入しました。

Q. バックアップのコストを含めると、再エネは安くないのでは?

はい、その通りです。再エネは燃料がいらないので限界費用(発電にかかる変動費)が低く、電力オークションでは勝てますが、それは彼らが統合費用(バックアップのコスト)を負担していないからです。統合費用には、以下のコストが含まれます。

  1. 容量市場のコスト: 将来の電力需給バランスを維持するために、発電事業者に供給力を調達するためのコストです。
  2. 蓄電池などのエネルギー貯蔵技術のコスト: 電力需給バランスを調整するために必要なコストです。
  3. 電力系統の強化コスト: 再エネの出力変動に対応するために必要なコストです。

これらのコストを再エネ業者が発電側課金で負担すると、再エネのコストは火力や原子力よりも高くなる可能性があります。バックアップコストを内部化すると、再エネは必ずしも安くないのです。

Q. 再エネTFは発電側課金に反対してますね?

はい、再エネTFは発電側課金に反対しています。その理由は再エネ業者のコスト増になるからです。その結果、4月からの発電側課金では、すでにFITやFIPの認定を受けた業者は除外されることになり、競争条件は不公平になりました。

Q. 再エネTFは中立な政府機関といえるんでしょうか?

再エネTFのメンバー4人のうち大林ミカさんなど2人が再エネ業界の利益を代弁する自然エネルギー財団のメンバーです。

おまけに上司の河野太郎大臣も山田正人参事官も再エネ業界の利益代表ですから、再エネTFが政府機関として必要な中立性の条件を満たしているのかどうかは疑問です。