航続距離も充電インフラも関係ない!EVの本命はミニカーだろう

EVに対する議論がずっと盛んである。その多くはネガティブな意見である。

  • 航続距離が短い
  • 充電できる場所が少ない
  • 充電に時間がかかる
  • 極寒の状況で大規模渋滞に巻き込まれると、バッテリー切れを起こして暖房も使えなくなってしまう

特に北陸で大雪が降って大渋滞が報じられると「ほら見ろやっぱりEVは駄目だ」という意見がわっと盛り上がる。

しかし、私はこれらがEVが普及しない主たる理由だとは考えていない。その最大の要因は「価格が高い」にあると考えている。

補助金を受けることで200万円以内で買える日産の「サクラ」は平均すると月産3,000台ほど売れている。べらぼうに売れているというほどではないが、軽自動車のランキングベスト10にランクインできそうなぐらいはある。※2024年2月 軽四輪車 通称名別 新車販売確報

安ければ売れるのである。

この高額になる理由がバッテリーである。電気自動車の製造コストの約40%がバッテリーだ。※会社四季報ONLINE

コストを抑えるためにバッテリーの搭載量を減らすと、航続距離が短くなってしまい自動車としての実用性に問題が生じてしまう。400kmぐらい無充電で走れなければ不安だろう。と誰もが思っていたわけである。

ところが日産のサクラは航続距離を割り切って、180km程度とすることで補助金があれば200万円を切る価格を実現したのである。その結果、まあまずまずといった売れ行きを見せている。

私の周辺を見回すと必ずと言っていいほど、一家に2台以上の車がある。3台あるのも普通である。ちなみに我が家は1台しかないのだが、こういう家は少数派である。まあ、私の場合は通勤がないのでいらないわけなのだ。

普通は1台は家族全員が乗るミニバン、2台目以降に買い物や近距離の通勤に使う車が必要になる。
この2台目以降の用途であれば、180kmという航続距離すら全く不要である。

1ヶ月に500km以内しか車に乗らないという回答が70%を超えているのである。このような人によってはサクラのようなEVでもよいということなのである。

とかくEVというといまの内燃機関車をEVに置き換えるか否かという議論になりがちである。

しかし、そうではなくて長距離を乗る可能性のある人は内燃機関車に乗ればよいし、そうでなければEVでもいいと考えればよいのである。

特に田舎では最近ガソリンスタンドがどんどん閉店しているという現状を考えると、自宅で充電できるEVは便利な足である。田舎であれば複数台の車を持っている家庭が多いので、セカンドカーやサードカーとしていい選択肢だ。

ちなみに我が家であれば1日に5kmぐらいしか乗らない日がほとんどで、50km以上乗る日はほとんどない。といったわけで、我が家のような使い方であればバッテリー容量の小さいEVも選択肢に入ってくる。

さて、そんなことを思っていた矢先、KGモーターズというベンチャー企業が造ったミニマムモビリティの試作車を近所でたまたま見る機会があった。

ちなみにこれはKGモーターズが作成した動画である。私はこのイベントでたまたま見たのである。

これがミニマムモビリティの外観。

サイズはかなり小さくてかわいい。

「全長2490mm×全幅1130mm×全高1465mm」とのことである。軽自動車よりも一回り以上小さい感じである。

この「全長2490mm×全幅1130m」というサイズと軽自動車を比べてみるとこんなに違う。とってもコンパクト。一般的な駐車場の横幅は3メートル程度なので2台横に並べておける小ささである。

なんと販売価格100万円、しかも税込み!めっちゃ安い!激安EVとして一時期話題になった中国の宏光EVと価格的には対抗しうる価格である。

なんと税金などの区分としては原動機付自転車と同じ扱いらしい。そのため、車検もなければ車両税も重量税もなく、自賠責もめちゃめちゃ安いので維持費もほとんどかからない。唯一高いのが任意保険だが、我が家は農協の共済に入っていてこれはめっちゃ安いので、ほとんど問題ない。

しかも、電気代は100kmあたり150円と、燃料代?は原動機付自転車よりも圧倒的に安い。

我が家には1台しか車がないので(別に1台しかなくてもちっとも困ってないのだが)、買ってもいいかな。いや、買いたい・・・。

話によると、60kmまでしか出ないそうなのだが、出だしはEVなのでモーターはゼロ(動き出し)からピークトルクを発生するので、原動機付自転車なみの小さな出力でも車体を動かすことができるとのこと。面白いよねこれ。

一般向けの展示としては初めてだとのことで、こんな茨城県くんだりまで遠くからこの車を見に来ていた。なんど岐阜から来た人もいるそうである。

徹底した軽量化が図られており、内張りには発泡ポリプロピレンが使われている。この発泡ポリプロピレンという材質はヘルメットのクッションとしても使用されており、このクッションがつぶれることで衝撃を吸収するそうである。

なんだかボコボコした感じであるが試作では削りっているためで、市販の際は射出発泡成形になるため滑らかな仕上がりになるそうである。

「射出成形となると金型が要りますよね。お金かかりますねぇ」
「そうなんですよ~」

運転席周り。

このタブレット端末はスピードなどの表示とのこと。かなり大型のディスプレイなので色々できそうな感じである。タブレットの上に写っている、プラスチックの板みたいなものはエアコンのカバーだそうだが、熱で変形している。試作部品は3Dプリンターでつくっているため、変形するそうだ。

正面から見るとこんな感じ。
エアコンのカバーが変形しているのがよく分かる・・・。

こういうところも、なんというかすごく「開発中」というリアリティがあって楽しい。

実際に座ってみると意外に広い。

一人乗りなので、両脇はかなり余裕がある。座席は上下調整がないので、身長172cmの私にとってはちょうどよかったが、身長の小さい女性などの場合はハンドルがじゃまになって見にくいということはあるようだ。

ラゲッジスペースはわりとある。大きめのスーツケースとかも普通に置けそう。

面白いのは屋根の部分。

ポリカーボネートでできている。よくカーポートの屋根や哺乳瓶などに使われている樹脂である。樹脂なので軽い。あと、ネジがついているのだが、これはルーフキャリアなどを取り付けるのに使うという想定だそうだ。少し錆びているが、市販の際には錆びない材質のネジになるはず。

ちなみに原動機付自転車と同じ扱いなので、こんな小さなナンバーが付いている。

公道を走ることはできるものの、安全性などの評価が終わっていないため、現時点では一般のお客さんに乗ってもらって公道を走ることは考えていないとのことだ。原付ミニカー規格は安全性などの基準はないものの(ないのか!)、安心して乗ってもらうために独自に評価をする予定らしい。

これから、細部を詰めていき、衝突試験などをパスしてようやく販売になるわけである。頑張って欲しいものである。

こんな感じで充電するコンセントが付いているが、差込口はごく一般的なアース付き100Vである。まあ、一戸建てであれば、家の外に大抵ついているあれだ。充電のための特別な設備は必要ない。

バッテリーが完全に空になった状態から、家庭用のコンセントで充電して5時間で充電は終了するとのこと。

逆に急速充電といった設備は使用できないとのこと。あくまで家なり会社にあるコンセントで充電することが前提となっているそうだ。

こちらが、いろいろ質問に答えてくださった取締役の横山文洋氏である。

もうすでに車があるので、いらないのだがめちゃめちゃ欲しい。これ買ったら面白そう、でもさすがにこれ買ったら奥さんに怒られるだろうなあと思っている次第である。

他に調べたり、他のお客さんとのやり取りの中で聞いたりしたこと、その他、諸々についてまとめてみよう。

  1. 航続距離
    100km、ただしエアコンを使うと2割程度は落ちる。程度というのはエアコンを使った場合にどれくらいの距離になるかは現時点では精密に計測してはいないため。
  2. サイズ・車重
    全長2490mm×全幅1130mm×全高1465mm・約650kg
  3. バッテリー
    7kWh(リチウムイオン)
    リチウムイオンは発火する可能性があるが、車体の中心下部に配置し、かつ車体とは独立したケースに覆うことで高い安全性を確保しているとのこと。
  4. バッテリー寿命
    3,000回の充放電に耐えるとのこと。3,000回なら、毎日充電しても約8年使えるということである。初代のリーフとかに比べたら全然いいですね。時代が進化していますからね・・・とのこと。
  5. バッテリーの交換費用
    現在未定だそうな。
  6. 積載量
    45kg
  7. 2人乗りにはならないのか
    法的な規制で2人乗りにしようとすると軽自動車のカテゴリーになってしまうので、税金などの点で不利になってしまうため、あくまで1人乗りの設計である。
  8. 鍵はどうやって開けるのか
    この車には鍵穴がない。スマホもしくはカードキーで開ける。
  9. 消耗部品は
    ほぼない。ウインドウウォッシャー液とかタイヤぐらい。
  10. タイヤ
    145/70R12 これなら安いよなぁ。4本新品買っても15,000円ぐらいしかしない。この車の最大の消耗品がタイヤなので維持費はめちゃめちゃ安い。
    EVは重量が重いのでタイヤの消耗が早いという欠点があるとされているが、この車はむしろ軽いのでタイヤの消耗は少ないはず。
    ちなみにブレーキは前がディスク、後ろがドラムであった。
  11. メンテナンスは誰がしてくれるのか
    エネオスにメンテナンスを依頼する方向で検討中とのこと。※プレスリリース参照のこと
  12. 時速60km以上は出ないのか
    出ない。そもそも原付きミニカーは最高時速が60kmと制限されている。
  13. 将来的な構想は
    全自動運転を視野に入れているとのこと。そうしたら、インフラとして非常に便利なものになるだろうとのこと。

なかなか楽しい展示であった。

まだ販売されるようになるまで時間があるので、買うか買わないか葛藤することにしようと思う。


編集部より:この記事は玉村嘉隆氏のブログ「たまさんのちゃり日記」2024年3月31日の記事を転載させていただきました。