中国が恐れる日本のアジア版NATO「AUKUS」加盟

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「AUKUS」とは何か

「AUKUS(オーカス)」は、2021年に米国主導で創設された米国、英国、オーストラリア3か国の新たな安全保障の枠組みであり軍事同盟である。「アジア版NATO」ともいうべき集団安全保障体制である。

米国と英国はオーストラリアによる原子力潜水艦の開発及び配備を支援し、太平洋地域における西側諸国の軍事的プレゼンスを強化することを目指している。その背景には、近年インド太平洋地域において影響力を増す中国に対抗する意図がある。

AUKUS加盟国
Wikipediaより

西太平洋の覇権を狙う中国の野望

周知のとおり、中国はかつて米国に対し、太平洋を二分しハワイから西海域を中国が支配し、東海域を米国が支配することを提案した。すなわち、中国には日本の排他的経済水域やオーストラリア、ニュージーランドを含む広大な西太平洋全域を自国の勢力圏とする野望がある。

中国はこのような長期的野望を実現するため、空母や原子力潜水艦建造、空母キラー中距離弾道ミサイルの増強をはじめ、海軍力・空軍力の強化に邁進しているのである。

もし、制海権・制空権を含め西太平洋が中国の勢力圏となれば、西太平洋地域での米国の軍事的影響力が及ばなくなり、日本は軍事的に孤立する事態となる。これは日本の安全保障上きわめて危険な事態である。

中国が恐れる日本のアジア版NATO「AUKUS」加盟

米国防総省は4月8日米英豪国防相による共同声明を発表し、「AUKUS」の防衛力を高める先端技術開発で「日本との協力を検討している」と表明した。日本の高い先端技術開発能力を評価するからである。具体的には、人工知能、対潜水艦戦闘能力、サイバー、極超音速兵器開発などが想定される。

日本は価値観を共有し同じ自由民主主義国である米英豪3か国の集団安全保障の枠組みの「AUKUS」に一刻も早く加盟すべきである。これは、日米安保に加え、日本の安全保障体制を重層的に強化するものであり、日本の対中抑止力を万全にすることは明らかである。

その証拠に、4月8日英国ファイナンシャルタイムスの「AUKUSが日本を含む参加国拡大に向けた協議を開始した」との報道を受けて、中国外務省は重大な懸念を表明し、「日本は歴史の教訓から学び、軍事・安全保障分野での言動を慎むべきだ」と牽制した。中国が技術力のある日本のアジア版NATOである「AUKAS」加盟をいかに恐れているかの証左である。日本の加盟による「AUKAS」の強化は西太平洋における中国の覇権獲得を困難にするからである。