先延ばしグセを辞めたいなら、村上春樹のように仕事に取り組め(滝川 徹)

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一般的に仕事に着手する時は「この仕事に取り組もう」「この作業を終わらせよう」と作業単位で考える人が多い。しかし実は、仕事は「時間単位」で捉えたほうが先送り・先延ばしをせずに取り組めるようになる。

そう語るのは現役会社員・時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より、仕事に着手するうえでのポイントを、再構成してお届けします。

「まとめて取り組んだほうが早い」という神話に対する考察

企画書作成など数時間~数十時間以上かかるような仕事は、まとめて一気に仕上げてしまったほうが早い。そう感じる人もいるだろう。実は私自身も昔はそう考えていた。

たとえば3時間で終わる見込みの仕事があれば「よし、今日の午後全部使って一気に終わらせるぞ!」と意気込んでいた。このやり方で数々の仕事を先送りしてきたことは言うまでもない。

作家が本を書くために山にこもる。そんな話を聞いたことがある人もいるだろう。たしかに、まとめて一気に終わらせるという仕事のやり方をしている人はいる。お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣氏は以前本を書くために10日間山にこもり、1日15時間執筆していたという。

一方、作家全てが西野氏のように本を書きあげるわけじゃない。ベストセラー作家の村上春樹氏は執筆作業を細分化して毎日同じペースで取り組むことで有名だ。毎日400字詰原稿用紙10枚を書くことをルールとしているという。

同じ本を書く行為でも、まとめて一気に終わらせるやり方(西野式)と、仕事を細分化して毎日少しずつ同じペースで取り組んでいくやり方(村上式)があるわけだ。どちらのやり方がはたして効率的なのか。私は村上式に分があると考えている。その理由を説明しよう。

「仕事に取り組めなくなる」―西野式の問題点

西野式の最大の問題点は、一般の人だと仕事にとりかかれず先送りしてしまうということだ。

取り組むときに「これから○時間もこの仕事に取り組まなければいけないのか‥」と感じることになる。そうすると心理的なハードルが上がり「明日また、がんばればいいや」と先送りしてしまう。このスタイルだと今まで通り、締め切りギリギリまで仕事に取りかかれない。

するとどうなるか。「ヤバい。締切が近づいているのに全然やれていない」と追い詰められるストレス。いざ仕事にとりかかってみたら予想以上に大変な仕事であることが判明し「今日は深夜まで残業だ……」という予想外の残業の発生。

あるいは「事前にAさんに資料をお願いしなければいけなかった。今からだと締切に間に合わない……」という不測の事態の発生。いずれも社会人なら誰しもが経験したことがあるはずだ。また、まとめて片付けようとするとトラブルなどの突発的な事象が発生したときに困る。

要するに、西野式は玄人向けの仕事のやり方なのだ。仕事に熟練していれば、心理的ハードルを乗り越えることも難しくない。おそらく西野氏にとっては15時間執筆に取り組むことは難しくないのだろう(私なら取り組めずにハイキングに出かけることになる)。

一般のビジネスパーソンにとってはまとまった時間を確保することも難しい。そう考えると西野式は一般のビジネスパーソン向けではないと言える。

村上式をさらに進化させた「30分仕事術」

仕事に取り組めなくなる原因となる心理的なハードルを下げるために最も有効なのは、仕事を細分化して毎日少しずつ取り組んでいく村上式の考え方を取り入れることだ。村上氏は仕事を作業単位(原稿用紙10枚)に細分化して毎日少しずつ取り組む方法を教えてくれた。

私が提案する30分仕事術は村上式の考え方をさらに進化させたものだ。村上式では原稿用紙10枚という作業単位に着目している。30分仕事術は、30分という時間単位に着目する。作業よりも時間に着目することでさらに心理的ハードルを下げることができるからだ。

たとえば今私はこの原稿を書いているが、この原稿を書くときに「よし。今日は5ページ書くぞ!」などと思えばプレッシャー(心理的なハードル)を感じ、書くことがとんでもなく困難になることだろう。

人は仕事に取り組むときに一定の成果(この場合は5ページ)を期待すると、心理的なハードルを感じる。そのことがわかっている私はこの原稿を書く前に「よし、ひとまず30分。この原稿に時間をかけよう」とだけ誓う。そうすることで、無事執筆に着手できているのだ。

同様に君が仕事に着手するときも成果・アウトプットに着目せず、取り組む時間にだけ着目すべきだ。レポート作成ならば「今日は2ページ書こう」ではなく「30分時間をかけよう」と思うようにする。勉強だってそうだ。「今日は参考書を10ページやるぞ」ではなく、ただ「30分勉強しよう」と思えばいい。

そのほうが結果的に効率良く働けるのだ。

滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。 

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月12日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。