干ばつがもたらす世界への警鐘

サバの漁獲量が落ち込んでいます。サバは一定の温度以下ではないと餌を食べないのですが、日本のそばの水温が高くなったため、サバがより温度の低い海を求めて動いてしまったとされています。漁獲についてはサンマなど毎年のように不漁の報道があり、一方で南洋の魚が日本の近海で獲れるようになるなど水産業を取り巻く環境が変わってきています。

それでも日本は地球温暖化問題についてはまだ恵まれているのかもしれません。

この冬、ニセコには外国人スキーヤーやスノーボーダーが大挙してやってきました。もちろん、普段雪が少ない国の方々もいますが、カナダからもニセコには多くの人が訪れました。理由はカナダのこの冬のスノーコンディションが悪かったからです。パウダースノーを安定的に楽しめる意味ではニセコを選べ、だったのでしょう。

中国の黄砂、2024年は最悪だったとされます。画像を見る限り、まるで砂漠の中で突風に巻き込まれたようなそんな状況です。理由は降り積もった雪が暖気の影響で早く融け、急激な乾燥が生じたためとされます。黄砂の原因の一つに中国の環境保持への配慮不足と水の大量使用で土地が干上がったことが挙げられます。一度干上がった土地に再び潤いを回復させるのは困難で黄砂の影響は今後、もっとひどくなる可能性があるでしょう。

それら干ばつや地球温暖化の問題の中で私が今、一番心配しているのが中南米です。23年の干ばつでパナマ運河に供給する水が不足、大型船が通れなくなるなど極めて深刻な状態が発生しました。

パナマ運河はそばにあるガトゥン湖の水を船が通行の際に一隻当たり約2億リットル使います。そのうえ、ガトゥン湖の水は人口450万人のパマナの約5割の住民の水の供給源ともなっています。その湖が干上がるというのはパナマ運河運航どころか、パナマの人の生死にかかわるのです。今は雨期になりつつあるはずですが、今年の秋、似たような問題が再発すれば極めて厳しい事態になるでしょう。

日経は4月10日付で「メキシコで水不足深刻 7割で干ばつ、迫る『ゼロデイ』」と報じています。ゼロディとは干ばつで水が干上がることを意味するそうですが、メキシコシティでは1-3月で1ミリ以上の雨が降ったのは1日だけで2月17日が最後の雨とのこと。6月には水が干上がると警告が出ています。また、農作物への影響が深刻であらゆる野菜の収穫量が落ちており、コーヒーも5割減だとされます。

カナダではオイルサンドがあるアルバータ州でオイルサンドの精製に必要な水がやはり干上がりつつあり、事態が深刻化しています。

これらの例は枚挙にいとまがないのですが、地球温暖化にどのような対策がとれるのか改めて考えなくてはいけない事態です。日経の社説は省エネや再生エネルギーの推進を謳っていますが、それはわかりきっていること。今更その切り口ではなく、目先に迫った干ばつと高温と自然環境の変化への対応をどうするか、議論すべきでしょう。

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我々は今までの生活環境を維持できなくなる可能性がある、そのために何ができるかを考えるべきです。例えば食糧生産に一部の地域で壊滅的打撃があった場合、他国からの供給ができる補完関係を作ることは重要でしょう。

また、我々も環境の変化に対応すべきです。例えば今、カカオが取れないのでチョコレートの価格が今後3倍以上になってきます。そのため、少なくともカナダではチョコレートの宣伝が鳴りを潜め、消費を喚起しないようにしています。

日本ではグルメ層が高騰するチョコレートでも競うように買うシーンが目に浮かびそうですが、それは蛮行であって、取れないものは取れるまで我慢すべきです。それはサンマもサバも同様。風物詩は理解できますが、我々は危機的な状況にあることを認識すべきでしょう。

日本人は自然との共生に長けています。一方で不必要な都市開発は砂漠化と都市熱を生みやすくなります。今後の不動産開発には応分の緑化推進の条件を今以上に厳しく付保すべきと考えます。カナダでは開発に伴い、一人当たりの必要緑地面積を開発計画人口に基づき賦課金ないし、公園整備を求められます。こういった配慮が日本も当然必要となってくるでしょう。

最後に水は貴重な資源となることが確実視されます。10年か20年もすれば「水は原油より高し」という時代が来るかもしれません。初めてパリに行った際、カフェで水の価格がコーラより高かったのが印象的だったのですが、そんな笑い話の第二幕は笑ってすまされないことになるでしょう。

これは人間社会全体への警鐘だと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月14日の記事より転載させていただきました。