トランプ不倫口止め料裁判始まる:英語ニュースは見出し翻訳が難しい

15日月曜日(日本時間16日)からニューヨーク(NY)市でトランプの「口止め料事件」の刑事裁判が始まる。先ずは12人の陪審員が選出から。これを親トランプメディア「Newsmax」が12日、「Judge Napolitano to Newsmax: Trump NYC Jury Must Have ‘No Agenda’」という見出しで報じた。

「Agenda」は「議題」や「政策」などの日本語になっていて、「Google」や「DeepL」のAIもそう翻訳する。が、「議題なし」では何のことか意味が判らず、辞書を引いても適切な訳がない。そういう時、筆者は「英辞郎」というネットサイトで調べる。すると「底意」という語が載っていた。

まさにピッタリ。つまり「(元)判事のナポリターノ氏はNewsmaxに対して、トランプのNY裁判の陪審員は“底意のない者”でなければならない(と述べた)」ということ。なお、アンドリュー・ナポリターノは、ニュージャージー州高等裁判所の元判事でトランプ支持の弁護士である。

元判事のこの発言の背景には、裁判を管轄するブルックリン郡でトランプが、16年と20年の過去2回の大統領選でヒラリーとバイデンの2割ほどしか得票できないほど嫌われていることがある。得票数は次のようだった。

したがって、民主党の大統領候補を支持する者がトランプの4倍いる地域が管轄する陪審員裁判で、トランプが嫌いという「底意」を持たない、公平公正な陪審員を選ぶのが難しい、とナポリターノは言いたいのである。因みに、NY州全体でも16年・20年共に62% vs. 38%でトランプが負けている。

ついでに裁判の概略を述べれば、マンハッタン地方検事アルビン・ブラッグによる起訴状は、16年にトランプが弁護士を使ってストーミー・ダニエルズに、06年に起きたとされる不倫について口止め料を支払い、そしてその支払いを業務記録に偽って記録したことが選挙法違反に当たるとしている。

斯様にブラッグは、単なる口止め料支払いを34件の別々の容疑に仕立てたとされるが、これに貢献したのが、かつてはトランプの弁護士だったマイケル・コーエンだ。彼がトランプの代理人としてダニエルズへの口止め料を立て替え、トランプが彼に返済した金が選挙資金から出ていた、との構図である。

この構図については、左派の『ニューヨーク・タイムズ』でさえ「検事局の法理論が検証されていないだけではなく不合理だ」と非難している。

だが、コーエンは選挙資金を違法に使い、その業務記録を改竄した連邦法への違反を認めている。トランプはこれらを否定しているが、起訴状は「大統領立候補中およびそれを進める中で、被告らはトランプ氏に関する否定的な話を特定し、隠蔽に同意した」からトランプも有罪だ、と述べている。

つまりブラッグは、トランプとコーエンが16年の大統領選挙後に、トランプに代わって口止め料を支払ったコーエンに対する返済計画をでっち上げたと述べ、二人は収入として分類される他の支払いに、コーエンへの返済を混ぜ込むことで、これを隠蔽しようとしたというのである。

因みに、コーエンは、詐欺を含む他の犯罪に対する量刑の軽減を得るために連邦検察が提示した非犯罪について進んで有罪を認めたといわれている。つまり、ある種の司法取引に応じた訳である(以上は、4日の「Politico」12日の「Foxnews」を参考にした)。

不倫相手に口止め料を払うことは、もちろん犯罪ではない。が、この裁判については、親トランプの人気アンカーですら、NY市の陪審員が有罪にするだろうと諦めている感がある。トランプの抱える訴訟4件の皮切りとなるこの裁判、果たして’No Agenda’の陪審員が選ばれるのか注目したい。