非連続な変革のための金融構造改革

企業にして、自分が現に営んでいる事業分野において、真に創造的な革新を起こそうとすれば、自己を否定するほかない。つまり、現存事業を売却して退路を断ち、その売却代金を新規事業に投資するほかないのである。時間の速さこそが変革の決定的成功要因なのだから、退路を断つことで、新規創造を速める方向への誘因が機能するわけである。

古いものの収益力に依存し、その衰退速度に合わせて新しいものに投資していたのでは、新しいものの創造はできないのみならず、むしろ逆に、古いものの衰退を遅らせ、新しいものの創造を自ら阻む方向にすら、誘因が働きかねないのである。そして、まさに、ここに日本企業のおかれた深刻な状況があるわけだ。

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日本企業は、過去において、執念にも近い異常な熱心さをもって、経験知に基づく小さな創造を地道に積み上げることで、一貫性、即ち、連続性のもとで、成長してきた。その成功の背景には、技術進化の速度が十分に追随可能なほどに遅く、そこに連続性があったからだが、今となれば、過去の成功体験は意味を失いつつあり、多方面において、連続性が断たれるべき必要性が生じている。

しかし、問題は金融である。日本のように、金融機能の中核が銀行等の預金取扱金融機関によって担われていると、預金を原資とした融資には高度な制約が課せられるので、融資先企業を全体としてとらえたときに収益を生んでいることが条件になるから、収益を生まない新事業は、収益を生む旧事業との抱き合わせでなければ、存続し得ない。

そこで、政策的に、預金取扱金融機関の役割を大幅に縮小させて、金融の主舞台を資本市場に移転させる必要がある。資本市場では、多様な性格をもつ資金は、多様な手法を通じて、自らに適した性格をもつ事業に直接に投資されるので、成長しないにしても安定している過去の遺産も、成長するにしても不確実な未来の産業も、それぞれに適切な投資家を見出すことができるわけだ。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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