どう見る株式市場:市場に春の嵐が吹いている

市場に春の嵐が吹いていますが、風はもうすぐ止むのでしょうか?市場予想ができたら何も困らないのですが、結果としてそれが当たろうが、外れようがわかる範囲で考えることは重要だと思います。考えた末の結果だということ、それを踏まえ、また将来の勉強につなげるという意味で市場の行方を探ってみましょう。

東京証券取引所 Wikipediaより

北米市場を見ている限り、地合いが良いとは言えません。株価の変動はグローバルな社会情勢や経済状況などが心理的な基調を作り、その後、産業や個別銘柄といった狭い範疇で個々銘柄の価値を検証することになるのですが、今、北米全体の天気は雨が降りそうな曇りという感じだと思います。

理由は①イスラエルの動向が読みづらいこと ②企業決算発表がこれから2週間でピークを迎えますが、やや不安感があること ③金利動向が読めないこと ④大統領選挙の行方が視野に入りつつあること これらがパズルのように絡み合っているため、快晴の空に向かってぐいぐい攻める感じにならないわけです。

一方、リスク回避の代名詞である金(ゴールド)ですが、個人的には一旦調整期に入るようにも見えます。急激に上げすぎたこともあるし、イスラエルとイランが戦火を交えてしまったことで見たくないものを見てしまい、恐怖というより現実としての意識に変わってきているからです。

例えばウクライナ侵攻の際には金価格は21年11月頃の1700㌦台が上がり始め、22年2月24日の侵攻のあと3月6日に2072㌦の高値を付け調整に入ります。同年10月に1600㌦台で底打ちするまでウクライナの戦禍の中、7カ月も下落したのです。

一方、原油は地政学的不安により現実問題としての供給不安定要素が生まれますので現在の85㌦という水準はまだ上があるとみています。グローバル社会がより不安定になるならその度合いにより90㌦でも100㌦でもおかしくはないでしょう。

原油市場は少ない参加者で形成されるため、値が飛びやすくなります。もちろん、中東問題が休戦などで収まるなら逆に原油価格は70ドル台に戻すこともあり得ますが、個人的には目先はまだそんな状況にないと思います。

こちらもウクライナ侵攻の際は22年3月6日に130㌦をつけその後6月12日まで120㌦台を維持していました。

これらを踏まえたうえで市場全体を見ると原油やそれに連動して動きやすい資源価格の上昇は物価上昇を生み出すため、中央銀行が利下げをする理由が無くなるのです。スタグフレーション型の物価上昇になった場合でも中央銀行の使命が物価と雇用のコントロールであってGDPではないため、理論的には今の高金利をもうしばし維持するとしてもおかしくないのです。

ただ、パウエル議長の発言と周りの政策委員やそれに準じる人たちの発言にはややばらつきあります。周りにいる人は「物価が下がらないので利下げはまだないよ」のトーンなのですが、パウエル議長はこの2か月ぐらいハト派に見えるのです。なぜなのか考えたのですが、やはり大統領選を意識し、株価が下落するのはうまくないと忖度というか気遣いをしているようにも見えるのです。

本来であれば大統領選がある年には株価が上がり、景気が良いムードを作るのが与党の常套手段ですが、今回は今のところそんな雰囲気はありません。これが今後、変化するのか、ここが判断しにくいところであります。

では日本の株価はどうなのでしょうか?以前、長期的にはまだ上はあると思うと書きましたが、それに変化はありません。併せて短期的な調整も指摘していたと思います。今、まさにそこにあるということです。

一部の有識者のコメントには外国人投資家には日本市場はまだ魅力的で上昇余地があるとあります。これも昨日のブログの流行の話ではないですが、外国人投資家が日本にマネーを仕向けるのは流行の一つでピークはとっくに終わっていて、更なる提灯がつくかどうかの話なのですが、私はそれは悲観的です。彼らは百戦錬磨で貪欲であります。すでに十分に上昇してしまった日本の株式に更なる果実があるとは思っていないでしょう。

ではお前はなぜそれでも長期的には株価が上がると考えるのかといえば日本で構造的変化がみられる点です。一つは物価上昇が好む好まざるにかかわらず起き、消費者がそれを受け入れ始めたこと、企業の賃上げが連続的になり、賃金の底上げが進むこと、これにより消費の喚起と企業側の売り上げ上昇でよい意味での経済回復が起こるだろうとみているわけです。そして最大のポイントは不動産価格が上昇し、持ち家の人は現在価値が評価上、上昇する点です。これが非常に大きく影響します。

ただ、目先の株価はちょっと痛いかもしれません。新興市場で資金を投じていた個人投資家に追証が出やすくなれば投資マネーが滞るとともに新NISAで株式市場に初めて参戦した人々に「やっぱり損した」と思わせるかもしれません。ただ、損といっても評価損で実際の損ではないのですが、人の頭はそう考えず、評価損益こそ喜怒哀楽の源泉だと考えています。

80年代バブルの頃、ほとんどのサラリーマンの恩恵はおこぼれ頂戴程度だったのに周りの雰囲気が良いから踊り狂った点はその典型だと思います。それはまさに現在価値、つまり見かけ上のお財布の中身が増えたことで金持ちになった気にさせたことなのです。

「どう見る株式市場」ですが、これから2週間は緊張感をもって情勢の動きを確認したほうが良いでしょう。ばくちをするなら別ですが、基本は静観するのが正しいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月17日の記事より転載させていただきました。