実家感満載の日帰り湯を楽しむ:山梨県『葭之池温泉』

408 今しか見られない富士山×桜×五重塔の競演に酔う~山梨県・新倉山浅間公園|ミヤコカエデ(Miyako Kaede)
外国人のみなさんが日本に旅行に来て何を見たいかと尋ねたとき多くの方は、 「フジサン!」 「サクラ!」 と答えるのではないでしょうか。それに加えて寺社仏閣を訪ねることも日本旅行の一つの楽しみです。中でも「ゴジュウノトウ」は一目見たい観光アイテムなのではないでしょうか。 そんな日本ならではの景色を一度に見られる。そんな贅...

山梨県富士吉田市を旅しています。新倉山浅間公園で富士と桜、それに五重塔のザ・日本のトリプルコラボに感動したあと富士急行でひと駅もどり、

葭池(よしいけ)温泉前駅で下車しました。外国人観光客でいっぱいだった新倉山とは打って変わってここは静かな住宅地。観光客はほとんどいません。温泉前と名前がついているので温泉街があって観光客で賑わっているのではないかと思ってしまいますが、ここにはそんな温泉街はありません。

この駅の周りにあるのは少しの住宅と一軒の日帰り温泉施設のみ。日帰り温泉施設といってもスーパー銭湯のような大型レジャー施設ではなくこんな鄙びた建物。何と江戸時代末期、安政3年に創業したという葭之池(よしのいけ)温泉です。今は日帰り温泉のみですが戦前までは旅館で宿泊客を受け入れていました。駅名は「之」は入らず、温泉施設と駅名が若干異なっているのが面白いですね。

料金は平日2時間の入浴で750円。一日いると1500円です。湯上り後のまち相場がまた渋い。子供のころ遊びに行った祖母の家がこんな感じだったかな。少し懐かしさを覚えます。

手前が男湯、向こうが女湯。平日の午前中ということもありますが、他の観光客は一切いません。3キロも離れていない新倉山の賑やかさからは想像もできません。絶景の桜はもちろん好きですが、人混みが苦手な私はこっちの方が断然好き。贅沢な温泉独り占めを楽しみます。

温泉の中はこんな感じ。湯舟はさほど大きくなく5人も入ればいっぱい。普段からそこまでお客さんは多くないのでしょう。それでも一人であれば十分すぎる広さ。やや熱めの風呂でゆったりと寛ぎます。臭いやとろみなどがない癖のないさっぱり感を感じさせてくれるいいお湯です。

と、窓の外を眺めると坪庭に桜が。露天風呂はありませんが窓越しに花見を楽しみつつ温泉を楽しみます。時折風が吹けば桜吹雪が舞い散る絶景までみられます。この景色を一人占め。至福です。

昭和感満載の看板、よき。
電球おじさん、この手の長さでどうやって帽子かぶるんだろ。

湯上り後はこちらの広間でも休憩できます。こたつにタオル干し。家庭感満載で実家に帰ってきたような気にさえなってしまいます。都心部のスーパー銭湯じゃ絶対にない味のある休憩施設です。昼食をここで摂ることができるようで、名物の吉田うどんなどを注文することができます。

縁側で寛いでいた猫が「なんだよ、寝てたのによぉ」と文句を言っているかのような様相を見せつつ部屋を出ていきました。

それでも私が建物から出ようとするときには玄関でお見送りをしてくれました。「また来てね♪」と言っているかのようで愛おしい。またここに戻って来たい。そう思わずにはいられませんでした。

葭池温泉前駅に戻ります。今気が付きましたが駅にも一本桜があって満開でした。

昔住んでいた実家を思い出させてくれる葭之池温泉。桜の時期にまたここに帰ってきたい。そう思いつつ次の旅先に向かうのでした。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。