人口動態統計のワクチン死は、国が公式に因果関係を認めた死亡事例なのか?

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「人口動態統計月報(概数)より取得できるコロナワクチン死は、国が公式に因果関係を認めた死亡事例である」とネットで主張している人がいます。今回は、その真偽を確かめてみました。

結論から言いますと、人口動態統計のコロナワクチン死は国が公式に因果関係を認めた死亡事例ではありません。

国の公式データより取得できるわけだから、国が公式に因果関係を認めているのではないかと思いたくなる気持ちは理解できますが、実際にはそうではないのです。

厚労省はこの件に関して、以下のように説明しています。

○ 人口動態統計月報(概数)令和3年5月分の結果(同年10月1日公表)において、その死亡数に、新型コロナワクチンの副反応を原死因として集計された者が、実数として含まれている。
○ 今回公表された人口動態統計における死亡数の中で、新型コロナワクチンを原死因とする事例が2件計上されているが、これは、死亡診断書を作成した医師が、その時点で把握している情報に基づき判断した結果を、国際的な統一ルールに従い集計したものとなっている。

つまり、死亡診断書を作成した医師が、新型コロナワクチンを原死因と診断書に記載すると、人口動態統計月報(概数)の公表結果に反映されるということです。これは、一人の医師の評価によるものであり、国が公式に因果関係を認めたものではありません。

厚労省によると人口動態統計のワクチン死の調べ方は以下の通りです。

最後に、現時点での日本のコロナワクチン接種後死亡事例の因果関係評価についてまとめておきます。

現在は3つの方法で評価されています。

1.α評価事例(副反応検討部会)
2.救済認定事例(疾病・障害認定審査会 )
3.新型コロナワクチンを原死因とする事例(人口動態統計月報、概数)

1と2は、国の審議会による評価です。ただし、2は厳密な因果関係評価を必要としません。 一方、3は死亡診断書を書いた一人の医師の評価です。

厚労省はこの件に関して以下のように説明しています。

人口動態統計における集計と副反応疑い報告制度における因果関係の評価は、評価を行うに当たっての基本となる情報、評価者等が異なっていることから、結果として、その結論にも差異が生じ得るものであり、今回の公表を受けて、副反応合同部会における判断が影響を受けることはない。

国が因果関係がある(厳密には因果関係が否定できない)と認定しているのはα評価事例だけなのです。救済認定も因果関係の認定と言えなくもないですが、α評価認定よりはかなり緩い基準で認定されるため、厳密な意味での因果関係認定事例とは言えません。

したがって、人口動態統計より取得できるコロナワクチン死の事例が今後何十件になろうとも、 国により重大な懸念と認識されることは決してないのです。 国に対して追究するべき点は、人口動態統計のワクチン死の件数ではなく、 不自然に少ないα評価事例の件数であると、私は考えます。