人生を変えた大阪での出来事

2002年5月の帰国は筆者の人生を変えることになった。5月8日に広島から新大阪駅に到着してラフォッレ新大阪ホテルにチェックインする前に駅の地下にある書店に入った。筆者は時間があると書店に入って気に入った本があれば購入するのを常としていた。列車での移動中やホテルで読むためであった。書店の入口の所にカートに乗せてバッグとスーツケースをレジがあるすぐ近くに置いた。時々カートを置いた方に振り向きながら書棚の方を見ていた。

10分くらい経過してカートを置いたところに戻った。カート、バッグ、スーツバッグすべてがなくなっているのに気づいた。書店の前の通路や階段を下りて外に出て回りを見渡したが、それらしきものは見つからなかった。

カタログがないと翌日から2週間予定していた客先訪問が意味のないものになってしまう。二日後に訪問予定だった札幌のお客に電話で事情を説明してひょとしてカタログなしで訪問するかもしれないと伝えた。駅構内の交番に行って盗難届を出した。

スペインから営業に来ている、カタログがないと商売もできないといったことを交番で伝えた。一人私服の警官が同行してくれて、盗んで中身を見て無用なものを良く捨てる場所の方まで案内してくれた。が、何も見つからなかった。その後、荷物なしでラフォッレホテルでチェックインした。

その後時間があったので四天王寺を訪問することにした。神社仏閣などを訪問するのは筆者の好みでもあった。この問題が発生していなければもっと時間もあったので遠出をして別の場所を訪問していたように思う。JR天王寺駅を出たところである人と偶然お会いして2時間余り立ち話をしてから、ホテルに戻った。お寺を参拝する以上に価値ある話を頂戴したからだった。

四天王寺 Jui-Chi Chan/iStock

今回の滞日が無駄になりそうなことに筆者は悔しがった。ところが、夜中の3時頃に駅の交番からホテルに電話が入った。バッグなどすべて見つかったので交番まで来て欲しいということだった。それで中身をチェックするとなくなっていたものは何もなかった。何しろ、カタログ、サンプルそして衣類だけでお金になるものは何も入っていなかったからである。

外見が重そうなので、何か貴重品でも入っていると思って狙っていたのであろう。いつも読んでいた筆者にとって貴重な本までバッグの中にあった。それを見つけた警官の説明によると、いつも盗んだものを放棄する駅の裏の方を念入りに調べたところ筆者の所有物らしきものが見つかったということなのであった。

ホテルに戻って再び床に就いたのは朝方4時半ころであった。それで少し睡眠して難波道具屋筋のお客のところに予定通り10時に訪問できた。またその翌日も関空から札幌にカタログなど資料をもって訪問できた。

これも交番の警官が熱心に探してくれた賜物であった。後日、交番に再度お礼のメッセージを送っておいた。

この出来事がなければ四天王寺を訪問しなかったであろうし、またそこでお会いした方と長時間の立ち話もなかったはず。その人の語られた内容がその後の筆者の人生に大きく影響を与えている。これなどはそのような計らいが天で既に決められていたのだと筆者は感じている。

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