FUNDEJの戦い:メキシコの行方不明者と犯罪カルテルの影

ヒューマン・ライツ国王賞

行方不明者は犯罪組織が必ず関係している

メキシコでこれまで行方不明者の数は11万2000人。2006年から2023年までに限定すると1万5000人となっている。ジャーナリストだけに限定して見ると2003年から2023年までに32人が行方不明者となっている。(2024年3月15日付「アルカラ大学リポート」から引用)。

メキシコで行方不明ということの問題は蔓延る麻薬組織カルテルと関係している。メキシコでは現在およそ50以上のカルテルが存在し、それの下請け的なギャング組織もある。これらがお互いに縄張り争いで熾烈な戦いを展開している。

それを報道すべくジャーナリストは調査を開始して行く。その過程の中で、それを阻もうとするカルテルやギャングの手によって殺害される。その死体を彼らが掘った穴に残虐にも捨てる。だからこの時点から行方不明となる。その後、運が良ければその死体が発見されて身元が確認されるというわけである。

同様のことが一般市民の間でも起きている。一般市民の場合には彼ら犯罪組織と何か関係を持っていたとか、単に彼らの争いの中に巻き込まれて目撃者となった時点で殺害されて死体の捨て場所に投げ込まれる。だからジャーナリストの場合と同様に、死体が発見されて身元が確認された時点で初めて行方不明者のリストから外されるということになる。

墓穴は毎日に新たに発見されている

死体が埋められている場所は毎日ように見つかっているという。2006年から2023年までに見つかった墓穴は2863カ所あるそうだ。その中でも、カルテル同士の縄張り争いが激しいタマウリパス州ではこれまで既に400カ所の墓穴が見つかっているそうだ。(3月24日付「ABC」から引用)。

この墓穴にもまた問題がある。そこで見つかった死体が余りに多く、身元確認ができる死体検案認定医が不足しているのである。現時点ですでに5万2000の死体の身元確認ができないままになっているそうだ。

FUNDEJの誕生

このような状況の中から2013年に誕生したのがFUNDEJ(Familias Unidas por Nuestros Desaparecidos)という行方不明者を探す家族組織である。この組織を設立した時は7家族だけであったが、今では400家族の集まりになっている。

この組織を構成する家族の誰かが消息を絶っているということである。それが息子た娘の場合は彼らの子供をそのあと擁護せねばならなくなり、経済的な負担も重荷になっているという。

このような悲しい出来事の前に、今年3月15日、スペインのヒューマン・ライツ国王賞がFUNDEJに授与された。その選考はスペインのオンブスマンとマドリード州のアルカラ大学によるものだ。授与式にはメキシコから出席した母親たちが彼女らのシンボルであるグリーンのスカーフを巻いて授与式に臨んだ。賞金2万5000ユーロ(300万円)はDNAの鑑定の費用に充てるとしている。

麻薬の消費が世界一の米国の隣にメキシコがあるということから、犯罪組織カルテルは今後もメキシコで存続して行くのは間違いない。だから彼らの犠牲者が跡を断つことはないであろう。