「年金支給開始通知」に感じるモヤモヤ感

社会人になって最初に勤務していた銀行の企業年金基金から「年金支給開始通知書のご送付について」という件名の郵送物が届きました。

日本の年金制度に関してはそもそも当てにすることなく資産運用を行ってきたので、支給金額や支給時期に関してはそれほど大きな関心はありません。

私の場合、勤務期間は11年ほどと短く、日本企業の企業年金制度では支給金額は低く抑えられてしまいます。ちなみに私の初回支給額は2か月分で何とわずか64,000円ほどでした。

そもそも、60歳になったからと言って、突然年金が支給されるという通知が届くことに大きな違和感を感じています。

自分で仕事をしていれば、誕生日を機に定年退職して収入が激減する訳ではありませんし、毎日の生活にも何の変化もありません。

自然年齢によって、区別される制度は一見公平に見えますが、生活環境や健康状態は年齢に関わりなく変わってきます。同じ年齢になったからといって一律で制度を適用するのは、本質的には合理的とは言えないのです。

年金の受け取り方についてどんな風にすれば「一番お得か」といった議論を延々している人を見ると、そんな小手先のテクニックの情報収集に時間をかけるなら、他にもっとやるべきことがあるのではないかと突っ込みを入れたくなります。

もちろんもらえるお金ですからありがたく頂きますが、他の年金制度の支給額を合わせたとしても、生活費としては不十分なことは明らかです。しかもインフレになれば、その実質額は更に目減りしていきます。

やはり、年金以外に自分で安定したキャッシュフローを手に入れる仕組みを計画的に構築しておくことが、老後の経済的な不安を解消するに最も必要なことだと再認識しました。

そして、心身の健康を維持することも重要です。クオリティ・オブ・ライフを高めるだけではなく、経済的な負担や心理的な不安も解消できるからです。

明らかなことは、年金だけでは人生後半戦の不安を解消することはできないということ。自分の人生の落とし前は自分でつけなければならないのです。国や自治体に頼るのは筋違いです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年4月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。