橋迫瑞穂氏が行う「虚言の流布と名誉毀損」に抗議する

與那覇 潤

4月17日に「北村紗衣・山内雁琳」訴訟の地裁判決が出た際、便乗して私を中傷する学者が出現したので、22日に前回の記事を書いた。文中にも記したとおり、うち1名は度重なる差別発言を繰り返している嶋理人(日本史学・熊本学園大学講師)である。

もう1名は、たまたまツイートを入手したものの、本人がその後消したように思われたので、文面のみ引用して実名は記さずにおいた。しかし翌23日、当該の人物から更なる「再中傷」が行われたので、画像を公開する。

現在はTwitterユーザーでないため、解像度が悪い点はご海容を

Twitter(X)での投稿の主は橋迫瑞穂氏であり、フォロワー数は9000人強。プロフィール欄には「社怪学者」とあるが、Researchmap によると立教大学社会学研究科で博士号を取っておられるそうだ。

前回も引用したとおり、この橋迫氏は4月18日、私の実名を挙げた上で「あれだけコラム書きまくったんだから、しっかり総括するのがスジ」と述べ、「まさか知らんふりってことはないよねー」と揶揄するツイートをした。

そのため私は、22日の前回記事で、「北村・雁琳」訴訟の判決の該当部分を示しつつ、北村氏側(原告)の提訴内容は私の「コラム」に事実誤認や名誉毀損がなかったことを証明していると述べた。これに対する橋迫氏の反応は、23日のツイートにいわく、

noteに北村先生と俺の論争は裁判の結果、俺が正しい、俺正しいという主張だけ書いてあって困惑している。なんで?

「なんで?」もなにも、橋迫氏が「お前は判決を受けて、かつて書いたコラムをどう思っているのか、総括せよ」(大意)と要求するから、私のコラムの内容が正当だったことは判決文を見ればわかる、とお答えしたのである。

橋迫氏の態度は、私を愚弄するのみならず、濫訴を避けるべく雁琳氏(被告)の発言歴のうち「名誉毀損にあたらない=私の『コラム』に基づく」ツイートはすべて訴因から除外した、北村紗衣氏および弁護団の法的誠実さへの努力を侮辱している。まさしく、二次加害そのものと言えよう。

これに加えて、橋迫氏が行ったツイートには多くの問題があり、以下のとおり強く抗議する。

橋迫瑞穂氏による誹謗中傷

橋迫氏は同じ23日に以下のように述べ、私があたかもX(Twitter)に依存し過度に没入する、精神的に不衛生な人間であるかのように中傷した。

與那覇さん、きっきちりねっちゃり私なんかよりずっとXに入り浸ってエゴサかけまくっているんだろうな、というのはわかりました

その貼り付き具合はあんまり健康じゃないよ!ぼくは去年からツイッターほどほどしか見てないんだ!おかげで食欲もまして肌も綺麗になったよ!お互い、精神衛生には気をつけような!

「きっきちり」は原文ママ

私は2011~14年にかけて、かなりのTwitterユーザーだったが、精神的な病気のために使用を中断し、事実として現在まで利用していない。本人が使用せずとも、「こうしたツイートがある」と知る方法はいくらでもあるが、他のユーザーからその一例を示されても、橋迫氏はなお居直っている。

自分こそ「SNS以外にITを知らない」と批判される橋迫瑞穂氏

橋迫瑞穂氏による名誉毀損

私は病気のためにTwitterの利用をやめ、その後療養を経て大学准教授を辞するに至った経緯を、2018年に刊行した『知性は死なない』に書いている。同書の139ページに、「うつに転じて以降の私は、類似の病気の知人どうしとのLINE以外、SNSをつかっていません」とも明記した(頁数は、現行の文春文庫版による。その後、LINEで繋がる範囲は多少広がった)。

したがって上記した橋迫氏の中傷は、「與那覇は実はいまもTwitterを使っており、自分の本に嘘を書く不誠実な人間だ」という印象を広め、私の社会的な評価を下落させるものである。23日に、橋迫氏はこうも言う。

與那覇さんぼくと友だちにならないか?DM待ってるぜ!いや、マジで。

DMとはTwitterの一機能であり、「マジで」とも添えてある以上、この発言は「現在も私(與那覇)がTwitterユーザーであること」を前提とするものだ。すなわち、橋迫氏が行っているのは虚偽の事実の摘示であって、単なる意見論評ではない

現在のところ、橋迫瑞穂氏との争いでカンパは予定していません。
著書の購入でご支援賜れるなら幸いです

橋迫瑞穂氏による名誉感情侵害

実は、橋迫氏による中傷は今回が初めてではない。アゴラに「コラム」を連載中だった2021年11月、彼女は「與那覇は精神科の利用者である以上、他人を批判する記事を書く資格はない」とする趣旨の発言を行ったため(ヘッダー写真)、私は翌12月の連載第11回で抗議している。

これに対して彼女は、そもそも自ら批判したはずの「私(橋迫氏)の攻撃性は、双極性障害2型ゆえだからしかたない」と示唆する弁明を述べた上で、以下のようにツイートした。

こうした居直り的な応答については、当時、連載第12回でも批判した。

上記の経緯を振り返るとき、今月23日に彼女が「精神衛生」云々の由をツイートしたのは、「同じメンタルの病気の体験者でも、私は回復したのに対し、お前(與那覇)はより重症な状態だ」と揶揄するものだ。これが私の名誉感情を侵害することは、明らかであろう。

橋迫瑞穂氏による他の人への中傷

クリエイターの表現の自由を擁護するマンガ・アニメのファンを「豚の嘶き」と罵った嶋理人と同様、この橋迫氏もまた暴言が多く、一例はアゴラでも2022年2月の記事で紹介している。具体的には、当時まとめられていたとおり、Twitterで意見が対立した女性の容姿を侮辱し、「きっしょい半乳を見せられる身にもなれ」と中傷したものだ。

2019年にはTwitter上で脅迫的な言辞を呈したことで、目撃者に告発サイトを開設されている。仔細がわからないため論評は控えるが、2022年8月には「名誉毀損およびプライバシー侵害」で訴えられてもいるそうである。

今後、同氏に対して採る措置

前回も記したとおり、私は元来、学者や言論人どうしのトラブルは「なるべく言論によって解決することが望ましい」と考えている。

しかしすでに3年来、言論で抗議しても反省の意思を示すことなく、中傷に応答しても更なる中傷で返す橋迫瑞穂氏に接して、今回、そうした私自身の発想に限界があるのではと感じるに至った。

したがって、名誉毀損での民事訴訟についても、弁護士と協議し検討する(予定請求額は、さしあたり220万円とする)。

しかし私としては、やはり少なくとも学者どうしであれば、法的な強制力「以外」で相手の誤りを改善しうるという希望を持ちたい。よって、最新の中傷の発端となった「北村・雁琳」訴訟に至るプロセスに倣い、まずは以下のとおりの対応を採ることとしたい。

橋迫瑞穂氏の所属は不明で、Twitterを利用していない私には、彼女へのレスバトルやDMで連絡することができない。しかし、大阪公立大学のセンターにて2024年度の研究員に採用されていることが、公開情報から確認できる。

したがって、本稿で記した数々の中傷行為について、橋迫氏から謝罪の表明がない場合、当該のセンターに対して、以下につき問い合わせる。

① 同センターとして、橋迫氏に私(與那覇)への中傷をやめ謝罪するよう、促していただく意思があるか否か。

② すでに2019年以来、多くの中傷行為に対する抗議があったことがインターネット上に記録されている橋迫氏と契約するにあたり、そうした過去の行為の是非を検討したのか否か。

③ 今回の私の問い合わせによって、本人のTwitterでの言動を知った後も、将来における契約の更改も含めて、橋迫氏との雇用関係を継続することを是とするのか否か。

橋迫氏からの謝罪を受けつける期限は、今年の大型連休が明ける2024年5月7日(火)の午前0時とする。求めるのは謝罪のみであり、Twitterアカウントの削除や、ブログを開設しての反省文の公開や、誠意の証明として私が指定する団体への金銭の寄付等を和解の条件にはしない。

例を示したとおり、「きっきちりねっちゃりずっとXに入り浸ってエゴサかけまく」らなくとも、橋迫氏が私にTwitterで言及すれば、把握する方法は十分にある。私のフルネームを漢字で正確に記入した上で、これまでの中傷すべてを撤回し謝罪する旨を、誤解の余地なく誠実にツイートされたい。

文面上でのみ頭を下げ、その裏で「暗喩的に揶揄する」といった誠意のないツイートでないかぎり、この件はそれで打ち止めとし、謝罪を受けた後に「オンラインで同業者の署名を募り社会的な排除を求める行為」は行わないことを誓う。私からの提案は以上であり、選ぶのは橋迫氏である。


編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2024年4月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。