多くの日本在住の方はゴールデンウィークを楽しんでいることでしょう。一方、この時ぞとばかり飛び回っているのが閣僚。欧米ではこの時期は会議やビジネスが捗るだけに外遊すれば重要人物とも会いやすく、1年で唯一のタイミングといってよいでしょう。夏休みや正月休みは海外ではモノにならないため、ゴールデンウィークこそ1年に一度のご奉公です。岸田首相も世界一周地球の裏側まで行かれていますが、政府専用機ではマイルが貯まるわけでもなく、同行している人は機内でもずっと仕事で苦痛の1週間でしょう。ご苦労様です。
では今週のつぶやきをお送りいたします。
落ち着きを取り戻す株式市場
日本がお休みの間、北米市場は元気を取り戻しました。ただ週明け火曜日の東京市場は円高のままなら微妙かもしれません。まず、本日発表された4月の雇用統計は事前予想24万人を下回る17.5万人で賃金上昇率も予想以下、失業率も上昇と黒星3つとなりました。パウエル議長に言わせれば「1か月のデータでは判断できない」というはずですが、今年は利下げがないかもしれないと思っていたところに一筋の光明が見えた感じです。その点からはゴルディロックス相場(適温相場)でようやく調整を抜けたという感じがします。
パウエル議長も先日の記者会見で言っていましたが今のインフレは「賃金インフレ」。カリフォルニア州ではファーストフード店で働く人の最低時給を20㌦(3000円)にする法律が通過していますが、「物価が上がるから人件費が上がる」の悪循環をFEDが気がついていないわけがなく、この賃金インフレにくさびを入れるのが今後のFEDの仕事になるでしょう。FEDは今回のインフレ局面において出だしの反応が遅れました。今回も下がらないインフレに執着し、高金利政策を維持していますが、これも長く維持しすぎているとあとでバッシングとなるように感じます。
さて、アップルの決算ですが、目も当てられない決算に対して目くらましの「史上最高の自社株買い」と増配で株価は6%以上の高騰。見る人が見ればわかりますが、これでアップルは成長を諦めたとみています。資金を使う先がない、だけどアップルは自社で新技術を開発する能力もなく、AIも他人のものを導入するのです。中国では高性能なファーウェイのスマホの発売でアップルの存在価値を落としています。同社に挽回の算段があるのか、私には大きな疑問符がつきます。
憲法改正議論
ほとんど忘れかけていた憲法改正議論。岸田氏がビデオメッセージで述べたのが「憲法改正は国民投票で」。そりゃそうです。不出来な政治家に任せてはおけない。いや、企業でも大きな決断は株主総会にかけるのと同様、憲法改正は国民投票するのが当然のプロセスです。これにより国民にも憲法が身近な存在になるのです。勉強する、考える、議論する癖がつくので国民投票は私はスイス並みに導入してもよいと思っています。
さて、立憲の「改正?興味なし」は立法府である国会における職務怠慢だともっと糾弾すべきです。共産党は「9条を貫いて対話!対話!対話!対話!」(産経)だそうですが、憲法は9条以外にもあるのです。国民に間違った印象を与える共産党の狭い視野に振り回されてはいけません。では憲法改正で一番声の大きい一人、櫻井よしこ氏はイベントで「憲法改正を推進できるのは岸田氏しかいない」と持ち上げました。これには「ほう、よしこ、そう来たか」とにんまりです。小石河連合では無理とハッキリ述べました。そうなんです、岸田氏は意外と行動力があるのです。安倍氏が大好きな人の基準だけで見てはいけないのです。岸田氏には岸田基準があるわけです。
ただ、秋までに具体的改憲へのプロセスをどこまで進められるかは岸田氏の手腕だと思います。まずは具体的で優先的に改憲を検討すべき憲法のリストをわかりやすく国民に提示し議論の意識を高めること。つぎに96条の国会議員の2/3、国民の過半数のルールを一番先に議論をしてもらいたいところです。私は2/3の縛りをもう少し下げてもいいと思いますが過半数では少なすぎる気もします。国民投票をしやすくすれば懸案の憲法改正案を一気にやるのではなく、各改憲案を国民に熟考してもらい、一つずつ進める感じでもよいと思います。この道筋ができれば岸田氏は歴史に残る大首相になります。
バイデン氏の「日本は排他的」発言は妄想か、確信犯か?
バイデン氏も「気遣い」という言葉を知らないのか、耄碌したのか、大統領選挙に向けて自分のことしか見えないのでしょうか?中国やロシアと日本を並列で「閉鎖的国家」として名ざししました。メディアは「排他的」と訳していますが、バイデン氏が使ったのがxenophobicという単語で排他的というより「外国人が苦手」というニュアンスがより強いと思います。私はこのニュースに接したとき、「それはまぁ、そうだ」と頷いていたのでバイデン氏の妄想ではないと思います。
日本人は日本人論が大好きな国民性とされ、その分析の書籍は相当数出ていますが、日本人が外国人から論評されるのは嫌う傾向があります。例えばルース ベネディクトの「菊と刀」が日本の中で受けが悪いのは日本にも来たことがない著者がどうやって日本人論を述べることができるのだという批判であり、同書が日本人をひとくくりのアイデンティティに収めようとしたところで「違うだろー!」という反論の狼煙が上がったわけです。なので日本国内ではこの発言におかんむりの方が多かったと理解しています。
バイデン氏のスピーチの主眼は「移民国家アメリカは万歳であり、移民を積極的に受け入れない日本、中国、ロシア、インドはxenophobicであり様々な問題を抱えている」(意訳)というわけです。しかし、中国やインドは人であふれかえっており移民を入れる理由はないし、ロシアに行きたい人が数多くいるとは思えません。バイデン氏は比喩を間違えています。それなら日本と韓国を並列にした方がまだ学術的には正しいでしょう。それと移民国家にも光と影があるのです。両手放しで万歳の訳がないわけでこの発言は選挙向けの下品なスピーチ以上の何物でもなく、抗議する気すら起きないのであります。
後記
カナダの医療は無料だけど安かれ悪かれだという評判があります。しかし改善ないし構造的改革はされています。私の場合、ファミリードクターと診療所で会うのは年に1回程度。後は電話でやりとり。処方箋やレントゲン、血液検査などの検査要請書は専用のポータルサイトから送られてきます。私の場合は3カ月と半年ごとの定期検査項目が4つあり、専門医から連絡がきたり、検査機関に自分でアポを入れます。結果はすぐに送られ、状況次第で専門医ないしファミリードクターから返事がきます。カナダも予防医療により膨れる医療費を減らすという動きで、私も年中、血を抜かれるけれど安心を頂いていると思うとカナダの医療も悪くないと思います。最大のメリットは3時間待って3分の診察がない点でしょうね。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月4日の記事より転載させていただきました。