人生、お金で苦労しない方法

「人生、お金で苦労しない方法」、そんな魔法のような答えはありません。ただし、若い時からある信念をもってコツコツ積み上げれば人生の第3コーナーを回ったあたりで「あっ、俺、残りの人生、行けそう」となるし、それをしていなければ「まずったなぁ。あの時〇〇していればよかった」という話になると思います。

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そもそもお金で苦労するかどうかは第一にその人の金銭感覚にあり、収入に対してほとんど全部支出していればお金は絶対に貯まりません。私の周りにも散見できるのですが、使うことに美徳を感じているような人がいます。こだわりの支出なら良いと思うのですが、服飾、食、旅行すべて我慢できない惰性消費型の方もいらっしゃいます。もちろん、使うことは日本の経済を支えるうえで重要ですが、私が助言できるとすればメリハリ消費を頭の片隅においてもらえればと思います。

日経ビジネスの特集に「パワーファミリーの研究」というのがあり、夫婦の収入が1500万円以上の家庭をそう称するようです。その記事の中にパワーファミリーの消費傾向を見る分析があります。消費者全体の傾向とパワーファミリーの消費傾向を比較したものです。

パワーファミリーが全体平均より多くお金を配分しているのが投資、子供の教育、国内旅行などで、驚くことに食品は全体平均より1割強低い結果となっています。ここで見えるのは可処分所得をどう配分するのかパワーファミリーは比較的計画性を持っているように見えます。

私は今日まで蒸気機関車のように働いてきてお金を使うことに時間を見出せませんでした。いや、むしろカナダにいるとお金を使いたくなるようなところがないので自然と戯れるとか、集まりに出席する、あとは書を読むといった地味な活動が主になります。このままだと私の老後はどうなるのだろうとふと思い、自分個人の収入と資産をベースに75歳までのキャッシュフローを作ってみたのです。

私の場合は日本の年金を今だに払っているのですが、65歳の満了時点でペイバック開始の前提にしました。カナダの年金もまだ積み上げており、受給を65歳開始で試算しています。会社からの給与や配当は現在の金額が今後75歳まで賃上げしないものとして計算します。一方、手持ちの資産である株式と若干の定期預金は年3%成長を前提とするコンサバな数字で見積もります。

するとどうなるかというと正直、お金がお金を生むので今の費消ペースだと75歳時点では減らないのでその後の人生でも支障はないだろうということが確認できたのです。

なぜこんなことを申し上げたかといえば自分の資産が10数年後どうなれば自分はどう暮らせるのかぐらい各々が知るべきだと思うのです。そして数字に無理があるなら今の費消ペースを抑える算段を早めにするということです。一方、資産が余ってしまうならどうにか処分する方法を考えるべきです。

私のクライアントの一人に子なし、ファミリーなしで十数億円の資産を持っている70代の方がいますが、彼は財産を使い切るためにばら撒き、浪費をしています。が、浪費の主流が酒になってしまい、朝から晩まで高級酒を飲み続けているのではた目からは明らかに不健康でいつ倒れてもおかしくないのです。

私は口にはしませんが、この方はある意味、お金を持っていることで不幸になったと思っています。生活水準はほどほどに抑制されたレベルでちょうどよいのです。つまりお金はないのも困るけれどありすぎるのも困るのです。

特に日本の場合、相続税が控えている中、相続を受けるほうも骨肉の争いが生じるなど家族親戚の不和が生じることすらあります。それでも人間の欲は留まるところを知らず、高級車にタワマン、別荘に高額の国内旅行で散財することしか使うことが無くなるのです。

私からすれば「その人生、本当にそれが楽しいのかねぇ?」と思うのです。もちろん、人の考え方は100人100様で私が講釈を垂れる筋合いは一つもありません。ですが、私としては人生第4コーナーを回ったら智慧がお金に勝るものだと思っています。がつがつ使うのではなく、賢人となるべく行動をし、もっと精神的ゆとりをもつ生活を前提にお金をどう配分すべきか、考えたいのです。社会への還元は一つの発想だと思います。

若い方でやみくもにお金を貯める方がいらっしゃいます。そういう方に「何を目的に貯めているのですか?」と聞けば「FIRE(早期リタイア)」とか「老後!」といわれるわけです。案外女性の方が多いのですが、「私は一生結婚しません。だから自分の身を守るためにお金をためてマンションを買って住処を確保してあとはささやかに暮らすのです」といわれると切なさを感じるのです。

マンションは減価するもの、だけど例えばインフレに強いゴールドを買っていれば確実に資産は切りあがっていくのになぁ、と思うわけです。

冒頭、人生、お金で苦労しない魔法はないと申し上げました。が、あえて言うならお金に振り回されるのではなく、お金を振り回すようになれば勝者になれるし、気持ちも楽になると私は思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月7日の記事より転載させていただきました。