交易条件の低下する日本:貿易の価格面での国際比較

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1. 輸出デフレータ

前回は、日本の企業物価指数のうち輸出物価指数輸入物価指数についてご紹介しました。

1980年代後半から、アップダウンしつつも輸出物価指数は下落傾向、輸入物価指数は上昇傾向が続いていました。

輸出物価指数に対する輸入物価指数の比率である交易条件(Terms of trade)は、長期にわたって低下し続けていた事になります。

日本の交易条件の計算結果については、前回記事をご参照ください。(参考記事:海外との物価の関係

貿易相手として中国などの存在感が増しつつある中、こういった傾向は各国で共通の事なのか、今回は国際比較をしてみましょう。

まずは、輸出デフレータの傾向から確認してみましょう。

図1 輸出デフレータ
OECD統計データより

図1は主要先進国の輸出デフレータの推移です。1970年を基準(1.0)とした倍率で表現しています。

前回ご紹介した通り、日本(青)は1980年代までは上昇していましたが、その後徐々に低下しています。2022年ではほぼ1970年と同じ水準です。

その他の主要先進国では、基本的に上昇傾向が続いていますね。

フランスや韓国は停滞気味にも見えます。

1970年に対する2022年の倍率で見ると、日本は1.1倍、ドイツは2.7倍、アメリカは4.0倍、イギリスは10.0倍、イタリアは17.0倍です。

物価が高い事で知られるスイスでも、徐々に輸出デフレータは上昇し、1970年の1.8倍となっています。

やはり輸出物価がこれだけ長期間かけて緩やかに低下傾向を続けているのは、日本特有の状況のようですね。

2. 輸入デフレータ

続いて、輸入デフレータについても眺めてみましょう。

図2 輸入デフレータ
OECD統計データより

図2が輸入デフレータです。

やはり日本は停滞傾向が続いていますが、1980年代後半からするとやや上昇傾向です。

他の主要先進国は基本的に徐々に上昇しています。

スイスは日本よりも上昇傾向が緩い状況のようです。

多少の乖離はあるものの、ドイツと日本は同じくらいの水準で推移しているのが興味深いですね。

1970年に対する2022年の倍率は、日本で2.6倍、ドイツ2.8倍、アメリカ5.0倍、イギリス9.2倍、イタリア21.1倍です。

3. 交易条件

続いて、輸出デフレータに対する輸入デフレータの比率である交易条件について眺めてみましょう。

図3 交易条件
OECD統計データより

図3が主要先進国の交易条件をまとめたものです。

貿易において、価格面で有利になってきたかどうかがわかります。

1980年代後半からの傾向を見ると、ドイツ、フランス、イタリア、アメリカは横ばい傾向です。

スイスも横ばい傾向が続き、近年やや低下気味です。

一方で日本と韓国は下落傾向が続いてきたことが読み取れますね。

特に日本は1970年の水準からすると0.4倍となり、長期にわたって交易条件が大きく低下してきたことがわかります。

4. 輸出・輸入デフレータと交易条件の特徴

今回は主要先進国の輸出デフレータ、輸入デフレータ、交易条件についてご紹介しました。

日本はどちらも停滞傾向ですが、特に輸出デフレータは徐々に低下していて、交易条件が長期にわたり悪化し続けてきたことが特徴的なようです。

他の主要先進国が横ばいか上昇傾向を続けている事と比べると、特に1990年代後半から2008年のリーマンショック前までにかけて交易条件の低下ぶりが際立っているように見えます。

2021年以降円安傾向が続いていますが、その影響が交易条件にどのように影響していくのか、今後の変化にも注目していきたいです。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。