前回ご紹介した敦賀から小浜線に乗り2時間ほど。京都府舞鶴市に来ました。舞鶴市の東の玄関口、東舞鶴駅に到着です。この日はとても暑く今年初めて30℃を超えました。5月なので湿度が低いのでまだいいんですが、それでも太陽光が薄い頭に突き刺さるのを感じます。
舞鶴市のあらまし
鶴が羽を広げたような形の舞鶴市。京都府北部の中心都市です。舞鶴湾は入り江が東西に2か所あって東側が東舞鶴、西が西舞鶴です。城下町として発展した西舞鶴(こちらがもとの舞鶴市)に対し、東舞鶴は軍港として発展した別の町(東舞鶴市)でしたが、戦時中に海軍基地が西舞鶴にも拡大した際に軍部から合併を求められて一つの舞鶴市となった経緯があります。
日本海軍は明治時代、舞鶴に軍事拠点「舞鶴鎮守府」を設置しました。日本の鎮守府はほかに横須賀、呉、佐世保の3つのみ。日本海側では唯一の鎮守府でした。上の地図の通り湾口が狭くて防御しやすく、波も立たないことから船を停泊させやすいことからこの町に白羽の矢が立ったのです。戦後も自衛隊が成立するとここに保安上舞鶴地方隊(現海上自衛隊舞鶴地方隊)が置かれ、秋田から島根にかけての防衛活動を行っています。
海軍を支えた廃線跡を歩く
東舞鶴駅から自衛艦が停泊している場所までは徒歩20分ほど。このような遊歩道が整備されています。この道路はかつて東舞鶴駅から延びていた中舞鶴線(舞鶴線支線)の廃線跡。海軍の兵員や軍需物資を運んでいましたが戦後昭和47年に廃止されました。
このレンガ造りの北吸トンネルも鉄道遺構のひとつ。今はガス灯が灯されていて遊歩道の一部として市民に親しまれています。経済産業省の近代化産業遺産にも登録されました。
今は市民の憩いの場・舞鶴赤れんがパーク
駅から徒歩20分。到着したのは「舞鶴赤れんがパーク」です。自衛艦が停泊する湾のそばにはかつて海軍が備蓄品の保管に使っていた赤れんが倉庫が30棟ほどありました。今はそのうち10棟が残され、いくつかを改装して博物館や店舗、おみやげ品を売る公園として開放しています。私が訪ねたのはゴールデンウイークの最中と言うこともあって市民のほか観光客も多くここに集まっていました。
こちらのレンガ倉庫は1号棟と呼ばれ、赤レンガ博物館として再生されています。旧海軍の魚雷倉庫として活用しており、この棟のみ鉄骨が入った強固な作りです。
わたしは全然知らないんですが、戦艦を擬人化した「艦これ」っていうゲームが人気となったことでゲーマーが舞鶴でも聖地巡礼に来ているようです。
自衛艦の宝庫・舞鶴湾を遊覧船でめぐる
さて、赤れんがパークからは舞鶴湾をめぐる遊覧船が出ています。船からでなくても一部は見られますが、ここには多くの自衛艦が停泊しており、この遊覧船に乗ればそのすべてを船から見ることができるそう。この日はゴールデンウィークということもあってかいつもより多くの艦艇が停泊しているとのことでお得なツアーとなりました。
舞鶴港はフェリーも発着しています。新日本海フェリーが小樽までの間のフェリーを毎日運行していますが、出航時間が深夜のためその姿を見ることはできません。
対岸に見える日本板硝子舞鶴事業所は旧海軍の軍需施設跡地に造られたもの。この周辺にはとてつもない広さの軍用地があって様々な軍施設が作られていました。
こちらはイージス艦「みょうこう」。イージス艦とは高度な防空能力と戦闘指揮システムを搭載した艦艇のことです。みょうこうは1999年に能登半島にいた不審船を追跡し、警告射撃を行った実績があります。ただこのときは不審船はそのまま北朝鮮海域に逃走してしまいました。
これを受けて開発されたのがミサイル艇「はやぶさ」。ミサイルを搭載した戦闘機能のほか赤外線暗視装置を搭載、44ノット(時速約80キロ超)のスピードで走れることから不審船追跡にも対処することが可能となりました。
イージス艦「あたご」は2013年の名探偵コナン「名探偵コナン 絶海の探偵」に登場して話題となりました。
最後に紹介されたのはこの木造船。かつては掃海艇として活躍していましたが古くなり除籍されました。この船は間もなく自衛隊の訓練の際に射撃の標的となり海に沈んでいくそうです。長年活躍した艦艇の最期がそんな悲しいものなんて知りませんでした…。
35分のクルーズを終えてのどを潤しました。今年一番の暑さだった日。ジンジャーエールがうまいです。赤れんがパーク内ではB級グルメ海軍カレーなども味わうことができます。
舞鶴に来た際にはぜひ立ち寄ってレトロ感いっぱいの赤れんがパークを散策していただき、クルーズ船に乗って風に吹かれながら普段見ることができない艦艇を見学してもらいたいなと思います。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年5月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。