投資における価値、バリュー、グロース、バリューアップ

資産は、それが投資対象である限り、必ず現金を創出するものであり、逆に、現金を創出するものだけが投資対象としての資産である。故に、資産の価値は、資産が生み出す将来の現金の現在価値である。

投資とは、第一に、資産の価値と一致した価格で資産を取得し、資産が内包する本源的収益、即ち、資産が生み出す将来の現金を享受することである。

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そして、資産が市場で取引されるとき、市場の参加者の平均的期待が常に価格に反映されているのならば、市場の効率性を前提にする限り、資産の価値と価格は一致しているはずである。しかし、実際には、市場は完全には効率的ではなく、価値と価格との間には、乖離があり得る。

この乖離について、価値が価格を上回るとき、その差は、バリューと呼ばれる。英語のバリューは価値のことだが、投資の世界では、バリューは価値そのものではなく、価格を上回る価値を意味している。そこで、投資とは、第二に、バリューのある資産を取得し、バリューから追加的収益を得ることとして、バリュー投資になる。

バリュー投資は、価値と価格の差に着目したもので、価値の上昇を期待するものではない。しかし、投資対象の選択において、資産価値の上昇が見込まれること、即ち資産の現金創出能力が高まっていくと見込まれることは、極めて重要な判断基準である。投資の世界では、英語のグロースは価値の成長を意味していて、故に、投資とは、第三に、価値の成長、即ち現金創出能力の拡大を目的にするものとして、グロース投資なのである。

能動的に資産価値を上げることはバリューアップと呼ばれる。バリューアップは、主として、プライベートエクイティや不動産などのプライベートな投資の仕組みで行われている。バリューアップは投資対象への積極的関与によってしか実現できず、そのような働きかけは、プライベートな関係性においてのみ可能である、あるいは、プライベートな関係性において、より有効に機能するからである。上場株式投資におけるアクティビズムは、経営への積極的関与を掲げるもので、バリューアップを志向した投資手法である。こうして、投資とは、第四に、バリューアップになるわけである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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