日系人が重宝される時代

つばさの党幹部が逮捕されましたがその根本理由は維新の吉村氏のいう「表現の自由を超えた」という点がもっとも端的についた説明でしょう。海外から見ると日本は欧米に比べて自由度が高い分野は多いと思います。カナダに住んでいて思うのは自分が良かれと思っても隣の人たちは不満であり、苦情をしかるべきルートで申し立てられ妥協せざるを得ないケースが多いのです。つまり欧米はバランスを重視し、自分だけ良かれという我儘は許されず、公共の中の一員であるという意識がより強いと思います。なので東京15区の選挙戦の時、私は異様な面持ちでありました。できればあの時とっ捕まえて欲しかったです。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

インフレ抑制には利下げ?

ブラックロックのCIO(最高投資責任者)のお一人、リック リーダー氏が「利上げが実際にインフレ率を下げるかどうかはわからない。実は、金利を下げればインフレ率は下がるというのが私の主張だ」と非常にユニークな持論を展開しました。私は最近、FRBが高金利政策を維持するのは間違っているのではないか、と指摘しましたが、その援護射撃のような意見です。氏のロジックは高所得者と高齢者が得る高利回りな債券投資から得られるリターンが大きく、それらを手にした人たちがサービス消費に回り、価格を押し上げているのだと。そのため、消費性向が高い低所得者が痛めつけられているというものです。

氏が掲げた例としてテニスシューズの価格は20年前と同じだが、観戦チケット代は2倍になっているとしています。私もカナダで債券がらみの投資(預金)では安定の年利5%以上の利回り保証を得ています。当然ながら金利収入は相当多額になり懐具合は緩めになっているのが実態です。製品価格は氏の指摘通り昔と変わっておらず、レッドオーシャン化し高付加価値で高価格戦略が難しい一方で、レストランやホテルなどサービス業は価格の上昇が顕著に見られます。

私は今の金利水準は高すぎだと思いますが、利下げすればインフレが収まるという誤解を生みやすい言い廻しより適温まで調整する必要があるとすべきかと思います。経済学の壮大なる実験が今、アメリカで展開されているわけですが、かつてのマネタリストの経済学が今、過渡期説はあり得るのでしょう。ただ、新たな経済学的見地がないのもまた事実で一種の袋小路ではないかという気もします。だからといって資本主義の終焉だという極論は私は述べません。富裕層が引き上げる物価水準は確かに存在し、それが大多数の普通の所得者層を苦しめ、あきらめの境地に追い込んでいるのが現代社会だろうと思います。カナダでリタイアするのにある調査で2億円弱(1.7ミリオンドル)必要だとされます。日本が2千万円で大騒ぎしたのと10倍の格差です。私はカナダの話は信じませんが、それにしても恐ろしや。

日系人が重宝される時代??

日経に「『求ム海外日系人』 推計3割増の500万人、企業先導役に」とあります。要は人材不足のうえ、国際感覚や言語能力を補う必要上、日系人に焦点をあて、その発掘をしようというわけです。岸田首相がブラジルで「故郷に帰ってきたようだ」と発言し、やんやの喝采だったとか。海外日系社会は古き良き日本のまま時計が止まったようなところがまだ残っています。それを岸田氏も感じてそう言ったのだろうと思いますが、故郷という言葉に現地の方は別の意味の反応をしたように感じます。

ブラジルで歓迎を受ける岸田首相 首相官邸HPより

当地の外交をみても現地で活躍する方々へは褒章、外務大臣賞などいろいろな顕彰がありますが、基本的に在外日本人が受賞するより日系カナダ人が多くなっています。在外公館の主目的の一つは在外日本人居住者のためにあります。日系カナダ人は「パスポートの色が違うから」といって日本人社会と外務公館を積極的には好みません。一定レベルの分断があるといってもよいと思います。それもあり、在外公館が顕彰を日系カナダ人に行い、気遣い、寄り添う姿勢を見せるわけです。

では現地日本人にはどうかといえば二重国籍取り締まりが厳しさを増しています。疑わしき人のブラックリストもあるものと察します。二重国籍者が日本国内でパスポートの更新をすれば日本の国籍を維持できるとされてきましたが、最近どうもその道も閉ざされつつあるように見えます。ただ、法律の抜け穴的な問題で日本人との間でカナダで生まれた子が国籍選択を迫られる際、日本国籍を選んでもカナダ国籍放棄は「努力義務」で実際には努力していない実態もあるという話も聞きます。在外公館のポジションもなかなか難しいかじ取りを求められているようです。

共同親権は親の真剣さと子供の意志の問題

共同親権の改正民法が通過しました。親権をめぐる法律改正は77年ぶりだとか。この背景には「結婚したけれど…」「子供はできたけれど…」の問題が顕著になってきた事実があるのでしょう。婚姻数はざっくり50万/年、離婚数は18万件/年。私、10年ぐらい前に結婚と離婚の比率は3:1ぐらいと申し上げた時、どこに目を付けているのかとお怒りのコメントを頂いたのですが、実態はごらんの通りです。私はそれ以上に離婚予備軍がかなりいるのではないかとみています。家庭内別居とか世間体などを理由に形だけの婚姻を続けている方も多いでしょう。

その間に挟まるのが子供で親のケンカは子供からすれば「大人は子供のケンカレベル以下やなぁ」と思っているのでしょう。離婚する理由はずばり父と母の価値観が結婚時から時間経過とともにどんどん相反するケースが増えたからでしょう。昔は母は父のフォロー型で主たる収入も父が得て母は家庭と子供育ての担当でした。これが両親とも社会で活躍するようになり、双方の価値観が変化したと考えています。その上、情報社会の影響もあります。海外では離婚は当たり前で学校では親は誰という話になり、複雑すぎてわかんない、という笑い話もあるとか。

とすれば共同親権は時代の要請ともいえるのでしょう。必ずしも望ましい理由ではないのですが、社会の変化に適合するよう民法が修正されたわけです。ただ、この法律は親目線の法律ではないかと思うのです。子供の判断の尊重はどこにあるのでしょうか?各家庭様々な事情がありますが、子供も小学生ぐらいになれば物心はついてくるものですが、その子供の意見や希望を十分に反映できる実態面が即さないとこの法律改正は机上の産物で終わってしまいます。子供の意志を尊重したい、それが私の思うところです。

後記
計画していた海の上に作る自社事務所新設と既存事務所棟の作り替え事業の業者選定を約3カ月かけて行いました。今般、業者選定を終え、業務契約を締結しました。電話ではやり取りしたけれど会うのは初めての社長さんの腕には全面タトゥでサングラス、でっかいトラックでやってきました。日本じゃまずないけれどこちらではこの体は普通なんですよね。工場制作で完成後、バージ(はしけ船)で運搬するのですが、工場は飛行機で行くようなところです。何はともあれこれでまた一歩前進して新しい事業が始まります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月18日の記事より転載させていただきました。