ビビり癖は一生治らない

黒坂岳央です。

ウィンストン・チャーチルの名言「金を失うのは小さく、名誉を失うのは大きい。しかし、勇気を失うことは全てを失う。」を肌感覚で理解している人はそこまで多くないと思っている。自分自身、その一人だった。むしろお金を失うことが最も恐ろしく、名誉や勇気などどうでも良いと考えていた。時給で働いていた頃は、とりあえず出社すれば給料は満額支給されていたからだ。

しかし、30歳を超えるとこの言葉があまりにもズシリと重くのしかかってくる。知識不足、技術不足は大した問題ではない。だが勇気がなく、あらゆる挑戦をする前にビビり癖がつくともはや治療することが困難になってしまうのだ。そして現状を変えるための勇気がなくなれば、人生の発展性も閉じられてしまう。故に勇気だけは絶対に失ってはならない。

masamasa3/iStock

戦う前から負けている人たち

2000年頃、あらゆる情報が可視化され、ノウハウが無料で全出しされたことで知識や技術はフラットになると考えられていた。だが結果は逆のことがおきた。学ぶ意欲がある人がどんどん強くなり、余計に格差が開いたのだ。これをデジタルデバイドという。

令和の今、情報はさらにスピーディーかつグラフィカルに提供されるようになった。デジタルデバイドは20年の時を経て、さらに深刻な格差を生み出した。数学でも英語でもビジネスの起業でも投資でも、ありとあらゆる情報は誰でも無料でアクセスできてしまう。意欲さえあれば、子供が海外大学院レベルの高等学問を自宅で学べる時代だ。自分自身、デザインやコードの知識は無料で独学で身につけた。今の時代、働き方改革が広がり、時短グッズやサービスも数多あることで「お金がない。教師がいない。時間がない」はもはや言い訳にできなくなった。「忙しくて時間がない」という人の多くは実際にはその余暇時間をインターネットで潰している。

これだけ恵まれた環境でも、行動しない人は絶対にしない。なんならやり方を動画でみてノウハウだけはかじっていたりする。後はやるだけだ。しかし雄弁にスラスラと言い訳を盾に絶対に行動しない。

理由はシンプル、ビビり癖が染み付いているからだ。「やっても失敗したらどうしよう」「うまくいかなかったら自分を嫌いになりそう」こうした恐れは治療が大変難しい。

ビビり癖は治療困難

キャリアで紆余曲折を経た経験を買われて、時折、親類から「進路の相談を乗ってほしい」と言われることがある。相手の状況をしっかりヒヤリングし、冷静に第3者目線で状況が好転するようなアドバイスを頑張った。だが、ビビり癖がついた相手は何をいっても「でも…」と言い出す。

「でも、あなたは優秀だったから出来ただけ」
「でも、今は時代が悪い」
「でも、もう年を取りすぎている」

相手の不安な気持ちに共感を示しながらも、1つ1つロジカルに相手の主張の矛盾を解き明かして話を進めるが、何をいってもどんな情報を出しても彼の「でも」を止めることは出来なかった。もはやお手上げ。貝のように可能性を自ら固く閉じている人を開かせる力は自分にはない。いや、誰がやってもおそらく変わらないだろう。

知識や技術の不足はなんとでもなる。誰しも最初は初心者であり、今や独学でいくらでも伸ばすことはできる。自分は40歳を超えた今もどんどん新しく学び、日々改善を繰り返してきたし、英語を教えている70代でゼロから頑張って最後にTOEIC800点、英検準1級合格を取った人を見てきているので、知識技術を付ける話について言えば、「もう遅い」と思ったことは一度もない。しかし、ビビり癖につける薬はないのだ。

本人もなんとかしたいと考えているかもしれないが、どれだけ論理的に考えが間違っていると伝えても本人に変わる気がないなら誰からのどんな言葉も響かないのだ。ビビり癖がつかないように気をつけて生きたいものである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。