このところ超過死亡数が話題になっているが、これをワクチン接種と関連づける根拠は弱い。今週のブログでも書いたように、超過死亡数のピークはワクチン接種数のピークから1ヶ月~数ヶ月遅れており、統計的な相関は弱い。
超過死亡数は世界共通にコロナ死者数の3~4倍
ただコロナの流行が終わったと思われた2022年末に、超過死亡が大きく増えたことは事実である。Economist誌のコロナデータでも、図1のように日本の超過死亡数(赤線)はつねにコロナ死者数のほぼ3倍で、ピークも一致している(2023年2月は5類移行にともなう不規則集計)。
図1 日本のコロナ死亡率(グレー)と超過死亡率(赤線)
これは日本だけの現象ではなく、図2のように世界全体でも同じように超過死亡数はコロナ死者数の3~4倍で、ピークも流行と一致している。要するに超過死亡>コロナ死者となるのは世界共通の傾向であり、ワクチン接種とはほとんど同期していない。
図2 世界全体の超過死亡率とコロナ死亡率
途上国では超過死亡数がコロナに比べて多くなった
コロナ感染が途上国に広がるにつれて、コロナ死者数の超過死亡数に占める比率は、2021年の37%から22年には16%に下がった。この比率は途上国ほど小さい(コロナ以外の死者が多い)。
図3 ヨーロッパとアジアの超過死亡率
超過死亡は「間接コロナ死」だった
つまり超過死亡は間接コロナ死と考えていいが、これは単にコロナに感染した人が死亡するとき陰性だったというタイムラグではない。途上国のほうが超過死亡数が多いことでもわかるように、これはワクチンより医療体制の問題である。
先進国では2021年からワクチン接種が始まって超過死亡が収まったが、アジアでは22年が流行のピークだった。流行が途上国に波及した時期に医療資源が不十分で、医療が逼迫したものと思われる。
ただ日本で22年末に超過死亡の最大のピークが来たのは、先進国では特異である。これは日本人が初期の武漢株に対して免疫があり、デルタ株にはワクチンもきいたのに対して、オミクロン株には免疫がなく、ワクチンもきかなかったためだろう。また医療体制の「コロナシフト」が強すぎ、コロナ以外の高齢患者への対応を後回しにした影響もあると思われる。