晴海フラッグの法人購入より批判されるべき「住宅ローン悪用者」

NHKが「首都圏ナビ」というサイトで晴海フラッグの購入者を調べ、販売方法に批判的な報道をしています(写真も同サイトから)。

晴海フラッグのサンビレッジという三菱地所が分譲した区画の1089戸の登記簿謄本を全て取得し、所有者を特定。

すると、法人名義の所有が全部で147社、292戸と全体の27%となり、棟ごとで見ると法人名義の部屋が40%を超えるところもあったそうです。

さらに、法人の保有状況を見ると、福岡の投資会社が38戸、東京での不動産会社が17戸というように、2戸以上の部屋を持っていたケースが合計45社あり、合計で190戸になりました。

晴海フラッグは、もともと東京都が所有していた土地を、ファミリー層向けの分譲マンションを整備するために、周辺相場より割安な価格で販売された物件です。

このような所有者の偏りは、本来目指していた方向とはかなりズレているのが現実です。

購入戸数に制限を設けなかったことがその根本原因という販売方法に批判的な論調です。

では、購入者を個人だけにして一人当たり一戸に限定すればよかったのでしょうか?

晴海フラッグで忘れてはいけないのは、販売当初は最寄り駅からの距離が遠く、マンションとしての価値に専門家でも懐疑的な声が多かったことです。

また、東京オリンピックがコロナ禍で1年延期されたことにより、引き渡し時期もずれ込み、キャンセルも続出しました。販売初期の頃は抽選なしでも購入できる部屋があったのです。

急速に人気化したのは、東京オリンピックが終わってしばらく経ってからです。

もし人気が出ず、売れ残ってしまえばまた同じように世間からの批判にさらされてしまう可能性もありました。このような状況であれば、当初に販売制限をかけなかったのは、仕方がないのではないでしょうか?

問題は、多くの人に注目され始め、人気化してからの対応が後手に回ったことです。急速に倍率が高まったのであれば、販売価格を引き上げるなどの対応もできたと思います。

それよりも批判されるべきは、金利の低い住宅ローンを使って物件を購入し、自己使用ではなく賃貸物件として貸し出しをしている人たちです。これは晴海フラッグに限らず他の物件でも起こっている問題です。

法人の大量購入はルール違反ではなく法律的には合法ですが、こちらの住宅ローンの悪用はルール違反の犯罪です。

NHKも、せっかく謄本をあげて法人叩きをするのであれば、賃貸物件との突合をして違法な取引をしている人たちもしっかり摘発して欲しいと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。