「ここだけの話」を聞く技術。そんなものは存在するのか?そう思った方もいることでしょう。よほどのコミュニケーション能力がない限り、そんなものは持てるはずがない、と思っている方も多いのではないでしょうか。
『できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』(井手隊長著)秀和システム
経験は知識で補うことが可能
経験というのは、長年の年月を掛けて培われるものです。お金で買えるものではないと著者は言います。
「仕事柄、経営者や社長にインタビューをすることもよくありますが、そういうときは圧倒的に自分には『経験』と『人間力』が足りないなと感じます。ベテランの方の歴史や経験に、こちらが追いつけるわけはないのです。私が執行役員を務めている株式会社フライヤーのCEOである大賀康史さんが、よく言っている言葉があります」(著者)
「『一流の経営者に経験で勝てるわけがない。若者がそういう方と対等に話をするためには、圧倒的な知識量が必要だ』。大賀さんは、フライヤーを立ち上げる前、経営コンサルタントの仕事をしていました。一流の経営者を前にコンサルティングをおこなうときに必要なのは、圧倒的な知識量でした」(同)
プロジェクトの合間や、休みの日に本を大量に買って、まとめて読み、知識の蓄えをしていたと言います。
「大賀さんの話でも学んだことですが、経営者や社長に取材をするときには、虚勢を張るのではなく、相手がびっくりするぐらい、その会社や相手のことを調べていくことがいいでしょう。当たり前と思うかもしれませんが、この当たり前をしっかりやっていくことが大事なのです」(著者)
「経営者の方は、自分が大事に育ててきた会社について、しっかりと調べてきてくれたこと、これに喜んでくれます。どんなに経験のない記者であっても、きちんと調べてくることで、誠意を伝えることはできるのです」(同)
ビジネスに必要な根回し力
ビジネスでは各々が抱えている業務があります。業務を円滑に進めるためには、知識と根回しが必要だと筆者は考えています。
優秀なビジネスパーソンには、根回しが上手で用意周到です。有名なエピソードとして、日露戦争の際、伊藤博文が、ルーズベルトの元に同級生を向かわせて、仲介の「根回し」をした話があります。国際的な紛争の場においても根回しは効果的なのです。
根回しの手間や労力は必要コストです。世の中に、完全にオープンで公平なものなど存在しません。もし、根回しを拒否されたら、まだ機が熟していないことを意味します。
また、人との関係性は質が大切です。成功している人の多くは、「どんな人」と縁をつなぐかを重視しています。そして、お互いを高め合っているものです。大企業を経営するような成功者には、共通した傾向があるものです。
優れた人と出会ったら、その人自身になることはできなくても、今の自分と相手の足りないものをどんどん埋めていくことができるはずです。これは、ゼロからイチを生み出すよりもはるかに簡単だと断言しておきましょう。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)