コスパを気にしない方が節約になる

黒坂岳央です。

筆者はかつてコスパ中毒者だった。何か商品サービスを買う時はとにかく入念に調べ上げ、スペック比較に始まり、セール情報やポイント還元などを計算して賢く買い物をすることが大好きだった。クレジットカードのマニアになり、「このカードで◯◯円決済したら、無料宿泊特典がつくのでお得!」みたいに考えて、もはやコスパの良い買い物が目的化してしまっていることすらあった。

しかし、今は完全にやめた。コスパは気にしない。旅行の時などはコスパの良いプランには「これだけ安い分、他の利用客が押し寄せて混雑するのでは?」と逆にリスクに感じて、あえて高くてコスパの悪いホテルを予約することもある。

そして気付いた。コスパを気にしない方がむしろ節約になっているということに。

miya227/iStock

コスパ中毒者になるデメリット

コスパ中毒者の良くない点として、「本来は必要のなかった買い物」が増えてしまうことにある。

たとえばAmazonのブラックフライデーセールは大変良く売れるのだが、こうしたセール時にあれもこれもと買ってしまうのだ。身近な例で言えばスーパーのおつとめ品などで、「調理済のお惣菜ならあまり品質の劣化もない」ということでたくさん買い込み、冷凍までしてしまう。

コスパに熱心になると、コスパに対するセンサーが強く反応するようになるので、不要だが安い商品を買わずに見送ることを「機会損失」と感じるようになってしまう。結果、余計な買い物が増える。

また、コスパにハマると時間を失う。クレジットカードのポイント還元やキャンペーンは期間限定であることも多く、還元率や期間もよく変動する。一時期は還元率に優れていたカードが、「改悪」してそうではなくなることもある。だから常に動向を追い続けることで最もパフォーマンスの良いクレカライフを楽しむことができるのだ。しかし、それには時間の消耗が付き物である。一度、クレカを発行した後も「このカードは150万円決済すると、無料宿泊特典がつくので、後◯万円使わねば」と本来必要のなかった管理の手間まで発生する。

このように「行き過ぎたコスパ中毒者」になることで時間とお金を失う。結果、目先のリターンは得られるが人生全体のコスパは低下するという矛盾が起きてしまう。

コスパを卒業しよう

半分、趣味のようにコスパを追求していたが、仕事も忙しくなり収入もある程度大きくなると小さなリターンを追求することがムダに思えるようになった。

クレジットカードのポイント還元を意識して買い物をするのではなく、必要なものを必要な時に買う。カードもあまりたくさん持つのをやめて、最低限の枚数にする。また、旅行は空いている時期だけを意識して、後はコスパなど考えずに自分の心が求めるものを予約してしまう。値段は見ずに価値だけを意識して買う。

これをするようになってから、セールの動向を追いかけることを一切しなくなり、マインドシェアを取っていたコスパから完全開放された。お得に賢く買い物をするより、もっと考えるべきことは人生にたくさんある。

上手な買い物は思い出にならないが、コスパを度外視して価値を感じる体験は思い出になる。人生は思い出づくりゲームであるため、思い出にならないことに時間を使っているヒマはないのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。