世界屈指のリゾート大国、モナコ公国。地中海に面してラグジュアリーなホテル&レストランが立ち並ぶ中、一際リゾート感あふれるのが、「モンテ・カルロ ベイ ホテル&リゾート」だ。
カジノがある中心地から少し離れた閑静なエリアに、海を目の前に広大な庭や砂を敷いたプールなどを擁する、ゆったり開放的な雰囲気のラグジュアリーホテル。このホテルのメインダイニング「ブルー・ベイ マルセル・ラヴァン」が、今、高い注目を集めている。
店名にもなっているラヴァンは、カリブ海にあるフランス海外県マルティニーク出身。17歳でフランスに渡り、アルザス地方やベルギーで料理修業をし、2005年から「モンテ・カルロ ベイ ホテル&リゾート」のシェフを務める。2015年にミシュランガイド1つ星、2022年には2つ星を獲得。2023年末から2024年頭にかけて客席と厨房の大改装を行い、雰囲気も新たに、今や、モナコで最も勢いあるレストランの一つとなった。
ラヴァンの料理は、子供の頃に祖母がマルティニークで作ってくれたおいしい料理の思い出を、モナコ周辺の極上地中海食材で再現したものがベース。そこに、アジアやアメリカなど世界中で滞在し食文化に触れた経験も取り入れている。
コースには、”さつまいも、パルメットヤシ、コロナータラード、自家製さくらんぼ&生姜のヴィネグレット、金柑、仔牛の胸腺&足とフダンソウのニョッキ”、”スイバのミルク仕立てとキャッサバのクランブル”など、ラヴァンらしい個性豊かな料理が並び、ゲストは食事をしながら地中海とカリブ諸島を中心に、食の旅を楽しめる。
2005年に現職に就くまで、ラヴァンは、料理学校やいわゆるグランシェフたちのもとで料理を学んだ経験はない。それゆえ、モナコでの初期の日々は、フランス料理の正統を取得していない、という負い目を常に感じていたという。
が、ある時、モナコの同系列ホテルの3つ星レストランを手がける巨匠アラン・デュカスに、「君のこれまでの体験は特別で貴重なもの、君自身の歴史を自信を持って語るべきだ」と言葉をかけられた。これが天啓。正統を学んでいないからこそ、唯一無二の生い立ちがあるからこそ、という意識と向き合い、感性が自由に赴くまま創造を行うようになり、彼の料理はどんどん進化した。
並行して、地元の生産者や食材への理解を深め、ホテル敷地内と近郊に広大なポタジェを作り、故郷の特産野菜やハーブなどを育て、よりクリエーションの幅を広げてきた。
そんな意識改革の結果が、2022年のミシュラン2つ星につながったのだろう。
昨年の大改装を経て、さらなる高みに向かってギアをアップした「ブルー・ベイ マルセル・ラヴァン」。多くのガストロノミーレストランが鎬を削るモナコにあって、一際異彩を放っている。
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