超過死亡数は「隠れコロナ死」で説明できる

池田 信夫

また超過死亡が話題になっているが、今までアゴラでも議論した結果をまとめておこう。次のグラフのように世界中で超過死亡数とコロナ死者数の相関係数がきわめて高いことは明らかである。それに対して、ワクチン接種数との相関係数は低い。

超過死亡はすべてコロナ関連死である

これを説明する仮説はいくつか考えられるが、ここでは仁井田浩二氏のもっともシンプルな仮説を紹介しよう。それは超過死亡はすべて直接・間接のコロナ死者であるというものだ。超過死亡数がほぼ一貫してコロナ死者数の3倍になっているので、陰性の死者も一時はコロナに感染した隠れコロナ死と考えるのだ。

超過死亡数とコロナ死者数の推移(仁井田浩二氏)

これは超過死亡の定義から考えると自然である。それは平年にはなかった出来事(感染症や災害など)による死者を示すものだから、2022年に起こった(多くの日本人に影響を及ぼす)平年とは違う出来事は、コロナの流行とワクチン接種しかない。

全国民がコロナに感染した?

だがこの仮説には難点がある。2022年の超過死亡数は12万人だが、コロナ死者数は4.8万人。この差の7.2万人がすべてコロナに感染したのに検査陽性にならなかったとは考えにくい。

これについての仁井田氏の説明はこうである:コロナ感染を引き金にして容態の悪化した高齢者が死亡するまでにウイルスが消えた。ウイルスが消えるまでに平均11日かかるが、死亡するまでに平均25日かかるので、死亡したときのPCR検査では陰性と判定される。実際の感染者は3倍以上いたと推定できる。

もう一つの難点は、オミクロン株の致死率は約0.1%だったので、12万人が死亡したということは、その1000倍の1億2000万人、つまりすべての日本人がコロナに感染したと考える必要があることだ。

これは日本の累計感染者数が30万人、欧州でも感染率が人口の半分程度であることを考えると無理があるが、オミクロンでは無症状の超軽症の風邪が多かったので、PCR検査では検出できなかったのかもしれない。また高齢者の致死率が高い(たとえば1%)とすると、隠れコロナ感染者は1000万人程度になる。

行動制限と過剰医療が隠れコロナ死者を増やした

隠れコロナ死者の中身としては、コロナ感染を引き金にして老衰の患者が亡くなるというケースが多い。また自宅で容態が急変して救急搬送が間に合わなかったというケースも多い。長期にわたる行動制限で体力が低下するフレイルの影響もあったと思われる。

世界の超過死亡率(黒の折れ線)を見ると、先進国ではコロナ死亡率(赤の折れ線)との差が小さいが、途上国では大きい。これはPCR検査をやっていない国が多いためだろう。日本は検査はかなりやったが、オミクロンでは感染爆発が起こったので、検査が追いつかなかった。

 

ワクチン接種による死者は、厚労省の発表では37人。もちろんこれは政府の認めた最小限の数字だが、4年間で累計21万人の超過死亡を説明するのはむずかしい。

今後、検証が必要なのは、先進国でロックダウンなどの厳戒態勢をやめた後も1年以上、2類相当の過剰医療を続けた厚労省の対応である。これによって高齢者の救命措置ができなくなり、超過死亡が増えたことも考えられる。

これは荒っぽい仮説に過ぎない。ご意見はアゴラサロンにどうぞ(初月無料)。