グルメ仲間の友人が調理人として厨房で働いている中目黒にあるフレンチレストランに出かけました。
料理好きが高じて、フレンチのお店にスタッフとして週1回働いているということです。
聞いてみると片手間で出来る甘いものではありません。営業開始は夕方19時からなのに、朝の10時にはお店に来て、下ごしらえやキッチンの準備などをしているそうです。1日に12時間以上立ちっぱなしで働いていることになります。
しかも、アルバイトではありませんから時給で給料がもらえる訳ではありません。スタジエと呼ばれる研修者といった位置付けで、仕事をしながら研修費用を支払っているそうです。
つまり、リアルなレストラン厨房体験ができる学校に通っているようなものなのです。
と言っても、お料理は本格的です。この日もアミューズのとうもろこしから始まり、ダチョウのカルパッチョ、茄子の温かい1品、稚鮎、鱧、鹿といった素材がふんだんに使われ、味付けも複雑味のある手の込んだものでした。
そして更にそれぞれのお皿に合わせた世界各国のマニアックなワインを合わせるという凝った内容で、最後のデザートまで堪能することができました。
全9品のフルコースに6つのワインをペアリングしたセットでお会計は税込16,500円と中目黒価格としては破格でした。
厨房での段取りを見ていると、プロに比べるとややぎこちない時もありましたが、お料理とサービスのレベルは高く「価値>価格」の内容です。
普通のレストランは人を雇って人件費がコストとしてお料理の代金に乗ってきます。しかし、こちらのお店には私の友人だけではなく、研修スタッフが何人もいて、真剣に仕事をしながら研修費用を負担しています。
つまり、お金目当てではなく真剣に美味しい料理を作りたい人が来店客のコストを負担しているような状態です。アルバイトよりも勤務態度は真面目で手抜きの無い仕事ぶりの人たちが集まっているはずです。
お店は低コストでやる気のある人材を集められて、料理人志望の人はリアルな料理体験ができる。そして来店客はリーズナブルに高品質なお料理を楽しむことができる。
近江商人の「三方よし」にも似た誰にとってもメリットのある仕組みに感心しました。
やはり、お料理は技術もありますが、心を込めて丁寧に作っているものに深い味わいと感動があります。今回のお店はメニュは2か月毎に変わるということで、次のお料理に変わった頃にまた出かけてみたいと思いました。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年6月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。