「ブラック企業」と言われないためにやらなければならない3つのこと

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シニアコンサルタント コンサルティング部 城間 弘二

はじめに

厚生労働省が『ブラック企業』という言葉を明確に定義しているわけではありません。

ただし、メディアや労働者の声などから下記のような特徴があります。

  • 労働基準法を違反した長時間労働や労働環境、残業不払による労働を強制する。
  • 有給休暇の取得を拒否される。
  • 法律違反になることを部下に指示している。
  • いじめ・嫌がらせ・セクハラ・パワーハラスメントなどがあり、それを是正できていない。
  • 不平等(好き嫌いでの評価、仕事の割り振り)な意思決定をしている。
  • 感情的なマネジメント(怒鳴る、無視をするなど)をしている。
  • プライベートな時間にも関わらず付き合いを強制される
  • 採用時に約束した条件と異なる。

一方で、『ブラック企業』という言葉を恐れ、本来会社としてあるべきマネジメントが出来ていない例もあります。

今回は『ブラック企業』という言葉に対して、どのようにマネジメントをするべきかについてお伝えしていきます。 

1. 採用時の認識合わせ

組織の問題の多くは誤解と錯覚が原因です。

採用面接や内定通知をする際には、労働条件のすり合わせはもちろん、どんなルールがあるのか、評価制度はどうなっているのかを採用予定者に誤解なく認識させる必要があります。会社に入社するという事は自分が納得する・しない関わらず会社のルール守り、上司からの指示は実行する必要がある事も認識させておかなければいけません。

全てのルールを伝えることはできなくても、これまで入社してきた従業員と認識のズレが生じてトラブルのあったルールは必ず伝えておきましょう。

また、自社の評価制度を伝える事も必要です。給与がどうやって上がっていくのか、いつの期限までに何が出来れば評価されるのかを明確にしなければ、頑張っているのに給与が上がらない『ブラック企業』だと認識されてしまう危険性があります。

2. 指揮系統や指示・ルール設定

指揮系統が整っていないと複数の人から指示が入ります。社長からはAと言われ、部長からはBと言われ、先輩からはCと言われるような組織では迷いが生じます。指揮系統は直属の上司のみ、イレギュラー時に別の人から指示が入る場合は明文化する必要があります。

そして、法律を無視したルール設定や指示は絶対にNGです。前述したように労働基準法を違反した長時間労働や労働環境、残業不払による労働を強制、有給休暇の取得を拒否などです。これは管理職に対してマネジメント方法を伝える教育が仕組み化されておらず、マネジメントの方法が属人的になってしまう事が原因です。

また、会社自体が法律を順守するより売上や利益を優先する方針であってはいけません。法律を順守した上で、どうやって売上や利益を獲得し、理念を実現させるかが重要です。いじめ・嫌がらせ・セクハラ・パワーハラスメントが起きないようなルール設定や違反した場合の対処方法も明確にしておかなければいけません。

管理職に対してマネジメント方法を伝える教育が仕組み化されておらず、見よう見まねや自己流のマネジメントになると、良かれと思ったことが逆効果につながる恐れがあります。

モチベーションが上がらないと言っている部下に対して間違った特別扱い(他の人が守っているルールを守らなくても良い等)をしてしまう事で、不平等でひいきしているように周りから捉えられてしまい、一部の人に負担が偏らないようにしましょう。

ただし上司が『ブラック企業』という言葉を恐れて、あるべきマネジメントが出来ないのも問題です。上司は管理部門の責任を負う代わりに部下を指示する権限があります。言い換えると権限を駆使して責任を果たす役割があります。そして部下はその指示を実行する責任があるのです。

部下が納得してくれないから、『ブラック企業』と言わそうだからと、本来設定するべき目標を設定しない、指示するべきことを指示しない状態があってはいけません。

目標が未達だった時に、感情的なマネジメント(怒鳴る、無視をするなど)をするのではなく、必要な知識を与え、次どうやったら達成できそうなのかを冷静に部下に考えさせて、成長できるように導くことが重要になります。

3. 曖昧さを無くす

ルールや指示、目標設定が曖昧な状態にならないようにしなければいけません。

「なるべく早くやっといて」と曖昧な指示をして、部下に対して「まだやってないのか?」「仕事が遅い」「無能だな」という指摘をすることで、「急いでやったのに何で指摘されるんだ」「無能な上司に無能と言われたくない」などと言った疑念が大きくなり、結果理不尽だ、ブラックだなどの言葉に置き換えられる危険性があります。

「私のOKの取れる資料を〇時までに完成させましょう、〇時に中間報告をください」などのように明確に指示をする必要があります。

また、ルール・指示・目標設定の精度を上げるには事実確認が重要です。

部下の声に耳を傾けるのは大事ですが、部下の納得出来る・出来ない、そのルールは嫌だ、大変だという主観的な意見に耳を傾けて情報収集すると、意思決定が出来ないもしくは意思決定を間違える危険性があります。

部下の声に耳を傾けるべきは事実情報です。今何が起きているのかの事実を色々な角度から収集したうえで意思決定したルール・指示・目標設定であれば、例えば部下が嫌がったとしても明確に設定しなければいけません。

「褒める」というのも使い方を間違ってはいけません。

「モチベーションがあがるからいいところを褒めてあげよう」などと部下の良いところを全て褒めようとすることで、部下が評価されたと誤解をする可能性があります。

そうすると「褒められているのに給与が上がらない」「おだてて働かせるだけで給与を上げるつもりのないブラックな企業だ」といった思考にさせてはいけませんので、例えば3 ヶ月で何が一人で出来るようになるべきなのか、そんな数字を達成させる必要があるのかを明確にした上で、結果が出たときに褒める。そして給与を上げるための材料の一つになるように連動させることが重要です。

最後に

『ブラック企業』と呼ばれることは、会社のイメージダウンにつながり、採用やお客様との取引に影響が出る可能性があります。ただし、『ブラック企業』という言葉に踊らされてあるべきマネジメントが出来なければ、市場に価値提供が出来る組織にはなっていきません。

法律を遵守し、あるべきマネジメント方法を明確にしていく中で、今回の内容が参考になれば幸いです。

城間 弘二(Hiroji Shiroma)
シニアコンサルタント コンサルティング部。琉球大学工学部を卒業後、システム会社で3年のキャリアを積むと、その後は人材サービス業界に転職。エリアマネージャーとしてマネジメントに悩み、答えが見つからないなか識学と出会いを果たし入社。現在はシニアコンサルタントとして活躍する。