祭りと化した都知事選

つくづく平和な国だなぁと思います。都知事選の立候補者は40人を超えてくる可能性もあります。東京都の経済規模は世界の国々と比較しても18位程度ですので都知事はそれなりの規模の国の首相や大統領並みのパワーと名声を得ることになります。当然責任も重大です。

数十億円を投入したプロジェクションマッピング 東京都HPより

そこに一般人の方を含め、大挙して立候補する理由はほとんどが売名だろうと考えています。供託金300万円は選挙後、得票数が10%に満たない場合没収されるので大半の方は300万円は預託ではなく、支払いになります。

それでも政見放送ではNHKで2回トータルで12分半も自分のアピールができるのです。NHKですよ。それ以外にも街にポスターを貼れるし選挙カーを繰り出して好きなことを言える、駅前に陣取り、持論を展開することも可能です。選挙結果は名前と共に公表されるのでメディアへのアピアランスも多少ですがあります。これが2週間できると思うと300万円は安いマーケティング効果です。

それに出馬した人にしてみれば、「おれ、都知事選に出てさぁ、落ちちゃったけど〇千人が俺に投票してくれたんだぜ」と一生、言い続けることができるでしょう。だから平和な国だと思うのです。

本気で政治をやりたいなら地方で勝負してみたまえ、と言いたいところです。

さて、緑と白の化かしあいとも揶揄される今回の都知事選。蓮舫氏にはいろいろな意見が出ています。擁護派もいるし、ぼろくそに言う人もいます。私の予想では蓮舫氏は組織票でもっても100万票台半ばあたりに留まると思います。それでも善戦だと思います。小池氏は悪くても250万票、前回の360万票ほどの勢いはなく、票が割れるのでよくても320万票ぐらいとみています。いずれにせよ、当選するのではないかと現時点で予想しています。

まず、蓮舫氏が当選したら立憲というより共産の色がドバっと出てきます。世界有数の大都市、東京で共産党がはびこるなど想像を絶する話です。投票する方はそこまで考えて未来の東京、世界の中の東京をどうとらえるのか考えてもらいたいと思います。

産経に掲載されている「阿比留瑠比の極言御免」に「蓮舫氏は批判ばかりか?」というコラムがあり、これが蓮舫氏の批判に対抗するように厳しく書き立てています。蓮舫氏が街頭演説で「何かあったら蓮舫は批判ばかりというが、そうでしょうか」と自らを評したことに阿比留氏が「批判以外に何があったというのだろうかと-」。

私は基本的に人の批判や上げ足はあまりとりません。嫌な人がいても相手にしないだけです。理由はそんなことにエネルギーを費やしている暇はないからです。自分が画策し、信じた道を進むだけだからです。それが指導者として求められる第一歩です。

ところが蓮舫氏の場合、民主党が一時期政権を取った時代を見ても批判が主体なのです。あの時は官僚を批判し、苛めました。蓮舫氏の支持者からみれば「スカッとする」なのでしょう。ところがスカッとする炭酸飲料を飲んでもその一瞬だけスカッとしてもその気持ちは維持できないし、それは「気持ち」であってそれが必要不可欠なモノかは別なのです。

例えば1千万円のある支出について議論が沸き起こったとします。極論では蓮舫氏はゼロにしろというのです。ところがそれが本当に無駄かどうかは検証しないとわからないし、物事は黒と白ですべて決着できるわけでもないのです。折衷もあるし、「落としどころ」という言葉もよく使います。蓮舫氏を見ていると労働組合の委員長がハチマキして威勢よく声を上げているシーンと重なるのです。しかし、労働組合も結局経営側と一定の妥結をするのです。

蓮舫氏がそういう意味では与件に対するコメントや修正案を出すのは得意ですが、与件そのものを自ら出すのは不得手であり、かつ与件を出すことで自分が批判される立場に立ったことがあまりないと思います。東京都民は怖いですよ。いや、本当に。まとも神経の持ち主では絶対に務まりません。

その点で小池氏はタヌキそのものなのです。一定の鈍感力も備えています。ヤジも聞こえないし、聞こえてもそれをさっと交わす術も身に着けています。そして既に2期やった実績は大きいのです。

戦後の都知事で1期かそれ以下が青島、猪瀬、舛添各氏です。2期が東氏と小池氏。3期が安井、美濃部氏、4期が鈴木、石原氏となっています。つまり都知事として小池氏はまだ殿堂入りには程遠いのであります。東京都のプーチンとか習近平になれとは言いませんが、任期という意味ではまだできるのでしょう。

東京都民は改革路線ではない、これは東京に生まれ育ち、それなりによく知る者として言い切ってよいと思います。よく海外都市では中道左派が優位とされます。日本の場合、国の政権も含め、立ち位置が他国よりもともと左寄りであり、小池都政も私から見れば海外の大都市の中道左派とそん色ないだろうなという位置です。よって蓮舫氏になるともっと明白に左に寄ってしまい、ここは中国か、という感じにすらなりかねないのです。このあたりの大局観は海外から見ると割とよく感じるものです。

さて、祭りと化した都知事選、選挙活動は東京でじっくり観戦させていただこうと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年6月14日の記事より転載させていただきました。