不満を抱え続けるのはなぜか?:関係維持が難しくなってきた現代社会

テスラ社が提示していたマスク氏への8兆8千億円のストックオプションによる報酬について株主総会で賛成多数で可決されました。この報酬、マスク氏が決めたのではなく、取締役会がスペースXやX社などいくつもの会社を経営するマスク氏の気をテスラ社に引きとどめるための高級な餌であります。マスク氏は性格から立ち上げは得手ですが、継続は自分ではやらないタイプです。ところがテスラ社はマスク氏の影が薄くなり他の事業に熱を上げられると困るのでしょう。変な話です。マスク氏の性格はあまのじゃくなので金でつられる男ではないことも確か。金持ちには金ではなく、スリルを提供すべきです。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

日米中銀は「時間稼ぎ」政策

パウエル議長が今週の政策決定会合で年内の利下げは1度というニュアンスを提示したことで市場は失望感に包まれました。同日朝に発表された消費者物価指数は事前予想を下回るインフレ率でパウエル氏から少し花を持たせる話が聞けるのでは、と期待した向きには「えー!」でした。個人的には現時点で年内利下げが1度という報道は受け流してよいとみています。というのはFOMCはdata drivenですが、秋には大きなクラックが起きやすくなるため何が起きるかわからないのです。たぶん、パウエル氏も予見できないそんなレベルです。

一方の日銀。個人的には植田総裁はビビったと思っています。前回の記者会見で記者の質問に不用意に答えたせいで円安が急伸した経緯があり、日銀の政策決定会合の委員らとメディアを介したコミュニケーションの難しさを痛感したと思います。そのため、国債買い入れの減額についても今回スパッと決めるかと思いきや、次回の会合で先行き1-2年の購入減額プランを討議するとしたのでしょう。大盤振る舞いのリップサービスです。もちろん、私からしたら違和感です。そんな1-2年先まで計画通り物事は進まない、だからFRBもフォワードガイダンスを実質的に止めて「会合ごとに」という表現に切り替えたのです。

私はパウエル氏や植田氏のことをこのブログで好きに語る程度ですが、もっと政権に近い人、経済界や金融界で影響力のある方々は様々な形で総裁に直言していると思います。そしてその多くは厳しい意見でしょう。賛成意見ならわざわざご意見番をしなくてもよいからです。つまり政策決定会合後の記者会見は最も緊張する場面であり、専門家集団が議論する言葉や知識レベルを記者を通じて平易に万人に伝えるそのギアチェンジであるともいえます。それこそ助動詞一つ違いが命取りになる、それが記者会見であり、記者も意地悪なのであります。

バイデン氏の不安

バイデン氏の息子、ハンター氏に3つの罪全部について有罪評決が出ました。トランプ氏の34の罪全部で有罪評決が出たのとは全然違いますが、バイデン大統領にとっては思った以上に堪えている、そう感じます。それがイタリアG7での夕食会の欠席であります。先週はノルマンディ作戦の記念日(D-Day)で欧州を訪れ、2週続きの欧州遠征は81歳の御年にはやはり厳しい試練です。おまけにウクライナの平和サミットはすっ飛ばし、G7後にさっさと帰国し、大統領選活動に精力を出すという予定になっています。

ある意味、よく体が持つなと思うのです。普通の年齢の方にとっても激務だと思いますが、高齢のバイデン氏は運動して健康維持をしているタイプでもなく、傍から見るともはや大統領をやらされている感が非常に強くなっています。おまけに大統領選の世論調査ではトランプ氏にリードを許す状況になっており、劣勢挽回のためには更に鞭打ち、走らねばなりません。しかもまだ第3コーナーから第4コーナーに差し掛かるぐらいの位置で最後の直線のレースではないのです。

とても言葉は悪いですが、民主党はバイデン氏を殺す気か、と思うのです。大統領をもう1期やるのは物理的にも無理であり、バイデン氏に大統領選を辞退させる方が理に適っていると思うのです。もちろん、誰か代わりが務まるのか、という話はあります。まさかハリス氏が候補者では冗談にもならない結果になるのは目に見えています。そこは民主党が英知を絞るべきです。私は史上最もつまらない老々対決の大統領選だけは見たくないのです。仮にトランプ氏が勝つ結果になろうとも民主党はその先を考えた行動をとるべきではないでしょうか?

不満を抱え続けるのはなぜか?

ロシアが和平案を提示しました。ウクライナ東部4州からのウクライナ軍の完全撤退とNATO加盟を諦めること。「ふざけるな」と思うでしょうけれど同地域には旧ソ連時代からのロシア人が多く住んでいたわけで、同国が抱えていた国内問題と不満であり、それにロシアが焚きつけた話です。フランスに目を転じましょう。来月の総選挙では下馬評通りなら極右がリードするとみられていますが、極左を含む左派4党が連合したので、第2党に躍進する公算が高くなりました。マクロン氏が率いる中道は第3党です。国政の想像が全くできません。バラバラです。

都知事戦で立憲の泉代表が蓮舫氏に冷たいコメントをしました。「立憲民主党として推薦や支持は現在考えていない」と。蓮舫氏が小池氏同様、無所属で勝負としたこともあるのでしょうが、泉氏は蓮舫氏の厳しい発言に不満で疎遠関係とされています。泉氏個人としては追い出し成功、「しめしめ」でしょう。というより蓮舫氏は立憲の中での立ち位置が疑問でした。同じ釜の飯を食う仲間同士ですら相互関係維持が難しくなってきた、これが現代社会であります。

泉健太代表と蓮舫参議院議員 立憲民主党HPより

岸田首相と麻生副総裁の関係もぎくしゃくしているとされます。私はそんなのは風邪と同じで1週間もすれば治ると思いますが、世界中で人々は自分の意図した通りにならないことにいら立ちを感じています。これは政治だけではなく、我々一般社会でもそう。一つにはミーイムズが世界全般的な広がりを見せていること、あらゆる事象が人気投票化し、可視化できる社会においてゲーム理論が先行していることがありそうです。かつてかけっこで「全員1等賞」という時代もあったのです。今それを言ったらはたかれそうです。それぐらい時代はギスギスし、ストレスをため、不満だらけの社会になったということです。

後記
カナダの医療は無料だが質が悪いとされてきましたがそれは過去の話。放置して病状が悪化し重大な疾病になると余計に金がかかるとカナダ政府は気がつき、今では予防措置に全力です。おかげで私は定期チェック項目が4つぐらいあり、年中検査。一昨日も半年ごとの超音波検査。バンクーバー最大級の病院で検査予約は朝7時半。10分前に行くと人で溢れています。結果は2時間後に私の担当医に連絡が行き、電話でやり取りという具合です。ちなみに処方箋も今は全部電子化。便利になりました。

では今日はこのぐらいで。。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年6月15日の記事より転載させていただきました。