眠れないと長期間の記憶が残らない?

しばらく続いていた突発的な呼吸困難症状が完全に消失して10日間経った。今日も不安を抱きながら長居公園の植物園まで散歩に行ってきたが、何の症状も出なかった。この数か月間の苦しみは何だったろうと不思議な心境だが、普通の日常生活を取り戻したことは喜ばしい。

これまでの経過を考えるとアレルギーであると思うのだが、原因となる抗原がわからないので、来年の春にはまた抗原が飛び散り、同じような症状が出るかもしれない。

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さて、6月12日のNature誌のニュース欄に「Sleep deprivation disrupts memory: here’s why」というタイトルの記事が出ていた。「睡眠不足は記憶を妨げる」という当たり前のことの原因の一端を明らかにしたという論文の解説だ。

長期間の記憶維持は即座に形成されるのではなく、睡眠している間に、脳の記憶に重要な領域での継続的な電気的刺激が必要とされる。睡眠不足になると、電気的な刺激があってもその刺激が弱いために、長期にわたる記憶が維持できなくなるのだそうだ。

私もアレルギーと思われる呼吸困難があったときには、睡眠時に頻回に目が覚めて、翌日は頭がすっきりしない状況に陥った。そして、時として、いつも使っている単語が出でこなくなるのだ。この症状は英語を話している時に顕著となった。4-5月中はこれを強く感じたが、5月終わりと6月初めにオランダと台湾から訪問団が来た時には、完全に復調していた。

睡眠は記憶するだけでなく、記憶の引き出しから単語を呼び出す時にも重要だ。時差の大きい海外に出張に行った時に、十分な睡眠がとれないと言葉が浮かばなくなることがある。睡眠は十分に取らなければならない。

そして、この記事の最後に、「事件、事故、災害に見舞われた時、強いストレスを感じて眠れなくなるのは、嫌な記憶を長期間にわたって残さないためのもの」ではないかと述べられていた。嫌なことに遭遇した時は、眠らない方がいいのか?そもそも、なかなか寝付けないが?


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年6月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。