なぜ自己啓発書は人気なのか?ブームの背景を観察する

ビジネス書の分野では、自己啓発書ブームが起きています。自己啓発とは先人の教えをもとに、自身の思考や能力を高めることです。また、自己啓発書を読む人の目的は人によってさまざま。仕事の成果をあげたい、仕事の人脈を構築したい、キャリアアップを目指したい、異分野への挑戦などがあげられるでしょう。

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誰もが知ってる代表作

では、なぜ自己啓発が持てはやされるのでしょうか。コロナ以降、私たちの生活は大きく変化しました。リモートワークという新たなスタイルが確立し、社会の変化に対応するために自身の能力・知識を刷新する必要にかられています。さらには、会社に依存しない知識やスキルへの欲求が高まっているのでしょう。

ヒット本としてまず、思い出されるのが「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」(ダイヤモンド社)の2冊ではないかと思います。世界40カ国以上で翻訳され、日本と中国でのダブルミリオンセラーを記録しています。アドラー心理学の「なぜ不安という感情をつくり出すのか」という問いが、読者に共感を呼び起こしたのです。

日本人は「自分はこうありたい」という見え方よりも、「他人にどのように見られているか」を気にします。嫌われないための行動規範が最優先にインプットされているためです。自分への向き合い方や、これからの生き方を考えるうえで、見え方を必要以上に気にすることに違和感を覚えていた人が多かったのでしょう。

「嫌われる勇気」は読みやすく構成されています。「どうすべきか」に主眼を置くアドラー心理学が、日本人に適合していたことを証明したのです。また、会社に勤める人が今後のキャリアを充実させるためには自分を切磋琢磨し、市場価値を高める以外にはありません。その時、嫌われる勇気の実践が必要不可欠なのです。

著者の立場に立つことが大事

次に紹介したいのは、『ユダヤ人大富豪の教え』をはじめとする、多くのベストセラーを執筆している作家・本田健さんです。私がオススメしたいのが「一瞬で人生を変える お金の秘密 happy money」(フォレスト出版)です。

私たちが社会生活を営む上でお金は不可欠な存在です。若くしてお金を手にしてもこの先、何か取り返しのつかないことが起こらないとは限りません。

有名人が手にしたすべてのものを失って、多額の借金を抱えたまま亡くなるニュースを目にすることがあります。これは、「お金のルール」が絶えず変わっていることを知らないからです。

お金のルールとはなんでしょうか?

バブル経済を考えてみましょう。「バブル崩壊」は、ある瞬間に発生した現象ではありません。誰もが、バブル崩壊と気がつかず、数年間をかけて生じてきた社会現象です。1人10万円が相場のすし屋、座って30万円のクラブ、ある日を境にして「お金のルール」が変わりました。

これは、仮想通貨にもあてはまります。10年前、中央銀行を介さない仮想通貨の台頭や資本の形成などは誰も予想していませんでした。全く新しいパラダイムシフトが発生しているのです。ある日を境にして、「お金のルール」が変わることは、いつの時代でもあり得ることなのです。

私は書店によく行きますが、最近気付いたことがあります。同じような自己啓発の本が多すぎるのではないか、と。どんなにたくさん自己啓発の本を読んで、本の通りに実践しても、必ずしも変われるとは限りません。

まず、著者の狙いを読者はきちんと受け取る。そのために、著者に寄り添い感じながら読む。すると、自分なりの解釈が生まれてくるはずです。

あなたが心を豊かにする一冊に出会えることをお祈りしています。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)