欧州で『極右』が躍進した理由を誰より明快に説明します

深田萌絵さんの政経プラットフォームで『深田萌絵×八幡和郎『脱炭素で右傾化するヨーロッパ』という動画を配信している。

欧州議会選挙(6月)で極右が躍進し、フランスではマリーヌ・ルペン氏の国民連合(RN)が第一党になった。今回の欧州議会選挙では、RNは31%を獲得して30議席(7増)、大統領与党13議席(10減)、社会党113議席(7増)、不服従のフランス9議席(3増)、共和党6議席(2減)を大きく引き離した。

ドイツでもCDU・CDSが30%で29議席(増減なし)、Afd16%で15議席(4増)、社民党14議席(2減)、緑の党12議席(9減)、ポピュリストの極左新党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」6議席、自民党5議席(増減なし)、左派党3議席(2減)、その他11議席だった。

緑の党は、デアボック外相がウクライナ紛争で極端にタカ派色を出したのと、化石燃料を使う暖房器具の設置禁止など極端な政策が災いした。

この背景について解説する。

ルペン党首とメローニ首相 両氏SNSより

政権与党が軒並み不振だったなかで大躍進したのは、メローニ首相を出す「イタリアの同胞」(極右でファシストの系統)だけだった。

欧州連合(EU)は、ブリュッセルに事務局、欧州議会はフランスのストラスブール、欧州裁判所はルクセンブルクと分散している。欧州中央銀行はドイツのフランクフルトでライン川沿いの仏独国境、カトリックとプロテスタントの境界に点在しているのがみそだ。

欧州議会は5年任期で、国ごとの比例代表。最低は6議席で、最大はドイツの96議席だ。

欧州議会では、極右・環境派・左派を排除して、ドイツのCDUなど保守派の「欧州人民党(EPP)」、マクロン大統領与党など中道の「欧州刷新(Renew)」、ショルツ首相のドイツ社民党の「社会・民主主義進歩連盟(S&D)」の三者連合で主導権をとっている。

フランスやドイツでは、右派と左派の対立が座標軸だ。欧州議会でも保守系会派と社民系会派が二大勢力だったが、冷戦が終わり欧州統合が進むと、それぞれの主流派がいずれも欧州統合推進派で、たいして政策の違いがなくなった。

欧州統合派のめざすのは、①欧州統合の深化と他地域との自由貿易、②NATOを重視し、ウクライナを支援し、中国へは警戒する、③移民・難民へ寛容だが、断固としたテロ対策、④財政規律の非常に強い維持とそのための年金制度の改革、⑤地球環境問題への取り組み、⑦新型コロナワクチンの半強制的な接種、⑧LGBTや中絶に見られる穏健リベラルの社会・宗教観、などが特徴的だ。

逆に言うと、極右や左派はこのような路線に懐疑的なのだ。そして、中道右派と中道左派が中道無党派層の票を狙って真ん中に拠りすぎた結果と環境問題やウクライナ問題で経済合理性を無視した政策をとったことで、右が大きく空いてしまって、極右の伸長を招いたということだ。

環境については前のめりに過ぎるし、ウクライナをEUやNATOには絶対入れないと仏独は言ってたのに、遠回しにいうものだから、ウクライナが誤解して大火事になた。

フランスのほうがドイツより極右が成功しているのは、マリーヌ・ルペンの脱悪魔路線の成功が故だ。日本の保守派よりははるかに穏健だし、経済政策もまだしもまともだ。