ティーンの自立と成長物語

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文部科学省の調査によると、令和3年度の高校中退者数は38,928人、中退率は1.2%である。進路変更がもっとも多く、35.3%。学校生活・学業不適応が34.2%となっている。

15歳の叫び あんな大人になりたくない」(松谷咲 著)みらいパブリッシング

15歳の自立奮闘記

著者は15歳で高校を中退しています。わずか4カ月の高校生活でした。初めはスッキリせず何かやらなくてはという焦りがありました。なかでも、大変だったのが親元を離れて一人暮らしをはじめたことでした。松谷さんは次のように言います。

「親に内緒でカラーコンタクトや化粧品を後払いで購入して、親のところに弁護士か督促状が届いたこともありました。そんな時、父は母に『絶対に払ってはいけない。咲が可愛いのであれば、払ってはいけない』と言っていました。当たり前ですが、一人暮らしを始めることに決めてから、お金を節約するようになりました」(松谷さん)

「 一人暮らしをするとなると、すべてのモノを自分でそろえる必要があるのです。アルバイトに行く時も、お金がかからないように、片道1時間かけて、自転車を使うことにしました。 冬場は夜になるとすごく寒くなるので、家に着く頃には手と足の感覚がなくなります。この一人暮らしを始めるにあたって、一番の悩みは洗濯機でした」(同)

松谷さんは、洗濯機以外の生活用品は友達からもらうことができたと言います。ところが、洗濯機だけが手に入りません。洗濯機の値段があんなに高いなんてビックリしました。クレジットカードが作れずに、amazonの分割もできなければ大きな出費になることは間違いありません。

コンビニで買うお菓子代、電車代、昼食代などもすぐになくなります。お金を稼ぐ苦労、稼いでも何も考えずに使っていたらすぐになくなること。親に頼っていたことが、わかってきたと言います。この歳で自立するためには様々な障害があることを理解したのでしょう。

17歳のリアル

書店には「生き方」の本がたくさん陳列されています。しかし、それらの多くはリアリティに欠けています。松谷さんのようなティーン世代がどのように感じ、どのように自分の道を切り開いていこうとしているのか? それらを大人が理解することは簡単ではありません。

17歳といえば多感な時期です。本書は、子育てをしている親御さんや学校で「先生」と呼ばれている人たちに読んでもらいたいと思います。本質に触れることで、何かを感じるのではないかと思います。

悩みを抱えていない子供もいないと思います。お父さんや、お母さんの言うことをよく聞いているいい子ではなく、ちょっと壁にぶち当たっている人にもおススメできる本です。

松谷咲さんの次作も期待しております。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)